事務所だより
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2017年1月 迎春
2017.01.01
迎春
2017年1月

弁護士 大 脇 美 保
弁護士 喜久山 大 貴
弁護士 久 米 弘 子
弁護士 塩 見 卓 也
弁護士 中 島    晃
弁護士 中 村 和 雄
弁護士 諸 富    健
弁護士 分 部 り か
事務局一同



NHK「朝ドラ」みていますか?
弁護士 大脇 美保


 みなさんはNHKの「朝ドラ」をみていますか。私は、「カーネーション」以来、ほとんどみています。基本的に女性が主人公であり、戦前の選挙権もない時代からの苦労や活躍が描かれており、この点からも興味深いものです。とくに、前回の「ととねえちゃん」は、実際の雑誌「暮らしの手帖」を題材にしており、なつかしくもありました。私は小学生のころ、自宅の廊下においてある母の本棚にきれいに並べられている「暮らしの手帖」を、廊下にすわって一人で読んだりしていました。現在は数え切れないくらいある女性向けの生活雑誌がほとんどない時代でした。久しぶりに「暮らしの手帖」を買ってみました。やはり商業広告はありませんでしたが、昔の勢いは感じられませんでした。考えてみれば、昔の「暮らしの手帖」のように、自分の生活から出た問題意識をとことん追求していって、社会的な問題にまでいたり行動するという姿勢は、弁護士の日々の仕事にも求められることではないかと思います。
 また、このようによい番組も作成しているNHKについては、従来から、組織的、予算的に、さまざまな問題が指摘されてきました。特に現在問題になっている、安倍首相の「お友達人事」による会長等選出、そして安倍首相による露骨なマスコミ操作については、テレビをよく見ている者(私のことです)こそが、より問題意識をもって行動していかなければならいと思っています。

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ごあいさつ
弁護士 喜久山 大貴


 はじめまして。
 2017年1月から市民共同法律事務所で働く弁護士の喜久山大貴です。奈良県出身で、大学からは神戸で過ごしました。
 学生時代、社会的に排除・抑圧されている当事者らとの出会いを通じて、私と彼/彼女らとのコミュニケーションを阻害するものについて考えるようになりました。色んなことを反省し、学び捨てながら、フェミニズムや障害学、政治思想などからたくさんの影響を受けました。
 司法修習生のときには、沖縄基地問題やヘイトスピーチに関するシンポジウムを企画し、東京オリンピック反対運動に積極的に参加してきました。
 弁護士として取り組みたいことは、差別される人々の苦痛や困難に寄り添い、分かち合うことです。そこに「生きやすい」空間を構築するため悩み抜くことが、私にとって他者と真摯に向き合うことだと考えるからです。また、そうした実践を通じて、社会の差別構造を問い直すための新たな気付きを得たり、運動のエネルギーを生み出したりすることにもつながると思います。
 このような生き方を、私のこととして、あなたのこととして、そして社会全体のこととして、行ったり来たりしながら、ぼちぼち頑張っていきたいです。
 
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親の介護から思うこと
弁護士 久米 弘子


 私の父は酉年でしたから、生きていれば108歳です。父が88歳で亡くなった時、母はその4年前に81歳で亡くなっていました。私たちきょうだいは、母の時に初めて親の医療と介護に向き合うことになり、とまどうことばかりでした。それでも、母の入院と残された父の生活の世話をしたことで、父の時には、わりとスムーズにきょうだいの協力ができました。
 私にとって、両親の介護をしたことは、とても貴重な経験になりました。弁護士の仕事では、遺言や相続、成年後見など、高齢者の財産や生活に関する相談や手続が増えています。親族間では、一旦争いになると、他人との紛争よりももっと深刻で解決困難となることが多く、たとえ、その問題は終了したとしても、その後の付き合いは断絶したままというのが多いものです。その原因の1つとして、高齢親の子どもたちへの対応が挙げられます。たとえば、複数の子どもに、いずれも「この家はお前にあげる」と言っていたり、結婚して遠くに住んでいる娘がたまに帰ってきた時に、同居している息子夫婦に対する不満を誇張して訴えたり、逆に息子夫婦には、娘の悪口を言っていたり、などです。これらは、高齢親が自分を守るために、誰からも良く思われていたいという気持ちから出たものなのですが、子どもたちの間に思いがけず深い溝を作ってしまうことがあります。
 自分の死後に子どもたちが絶対トラブルにならないという妙案はありません。生きている間に親子きょうだいが仲良くできていれば一番よいのですが、どうでしょうか。
 
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307日に及ぶ職場占拠ストライキが解決
弁護士 塩見 卓也


 この事務所ニュースの昨年新年号で、2007年の韓国で実際にあった「イーランド争議」という職場占拠を伴う労働争議を題材にした、『外泊』というドキュメンタリー映画、『明日へ』(原題『カート』)という韓国映画を紹介し、さらに京都でも、社長の落ち度で事業許可を取り消されたにもかかわらず、社長が雲隠れして団体交渉を拒否したため、昨年9月7日から職場占拠ストライキに突入している労働争議があることを書きました。その労働争議は307日を経て、労働組合である「きょうとユニオンiWAi分会」の大勝利で解決しました。
 この件では、会社側が組合に立ち退きを求めるなどの沢山の法的手続が申し立てられましたが、昨年2月8日、大阪高裁から、職場占拠ストライキの正当性を正面から認める決定を勝ち取ることができました。職場占拠の正当性を認める裁判所の判断は、昭和29年以来らしいです。その決定後、会社と組合は交渉を再開し、さらに私と会社側代理人との交渉を経て、会社は組合員らの解雇を撤回し、組合員らが事業主都合により合意退職したことを確認した上で、組合及び組合員らに対し解決金を支払う内容で合意し、和解解決となりました。
 和解合意書に調印後、私は組合員らと一緒に職場占拠中の社屋に向かい、職場内に設置された立て籠もり用のテント内で、勝利の祝宴を行いました。この日の祝宴はさながら、ご紹介した韓国映画のワン・シーンのようで、私にとって一生忘れられない楽しい夜となりました。

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白神山地を訪れて
弁護士 中島  晃


 昨年秋、紅葉の時期に、白神山地を訪れた。白神山地は、青森と秋田の県境に拡がる、世界で最大規模のブナ林として知られ、1993年、ユネスコの世界自然遺産(日本の世界遺産第1号)に登録された。
 ブナは、貯水機能をもった樹木であり、大きなブナの木は田一枚に匹敵する水をたたえることができるといわれている。
 その一方で、木質が密でないことから、建築用材には不向きとされ、その多くは伐採されて、経済的価値の高い杉やヒノキなどに植え替えられていった。しかし、東北の奥地まで開発の手がのびなかったために、奇跡的に、白神山地のブナ林は現在まで生きのびることができた。
 白神山地のガイドをしてくれた青年は、いま「マタギ」に弟子入りして、熊打ちの修業をしているとのことであった。
 マタギは、東北の山間でいまも、狩猟などを生業としている人々であるが、独特の宗教観と生命倫理を尊ぶという点で、近代的な装備のハンターと異なり、決してやみくもに熊を打つことはしないといわれている。
 いま、日本の社会は、お金がもうかるなら何をやってもいいという風潮がはびこっている。世界遺産・下鴨神社の境内地で、分譲マンションが建設されているのも、そうした具体的なあらわれの一つではないだろうか。
 こうした中で、東北の地に、現代の日本社会をおおっている経済至上主義とは異なる自然観や文化が残っていることは貴重であり、これを現代にどう生かしていくか、いま問われていると考える。

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台湾の労働事情
弁護士 中村 和雄


 昨年秋に台北で開催された「日台労働フォーラム」に参加してきました。日本と台湾の労働法の研究者と弁護士がお互いの制度を学びあい研究交流しました。台湾の最高裁判事も参加され、両国の制度の共通点と相違点、グローバル化の中での労働規制のあり方などについて意見交換しました。
 私は台湾訪問がはじめてでしたが、外国に来た気がしませんでした。漢字の看板が多いせいもあるのですが、まるで大阪梅田を回っているような錯覚に陥りました。食べ物は大変おいしく、マンゴーかき氷も絶品でした。
 フォーラム翌日に新北市を訪問しました。新北市の労働局長さんらが労働紛争解決状況について説明してくれました。日本とは制度が異なり、労働紛争調整制度は各自治体の権能になのですが、新北市ではなんと4年間で1万5,000件もの調整事件があるのです。全国では9万件以上も受けつけています。台湾全土で2,350万人の人口ですから、労働紛争処理の件数は日本よりはるかに多いのです。しかもその7割以上が解決しています。
 さらに、新北市では、解決できなかった事案について、なぜ解決に至らなかったのかを追跡調査して分析しているのです。わが国の労働紛争処理システムのあり方を研究する上で、とても参考になります。今後引き続いて交流を深め、おおいに台湾の制度についても学んでいきたいと思います。

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南スーダンPKOに派遣されている自衛隊は今すぐ撤退すべき
弁護士 諸富  健


 政府は、南スーダンPKOに派遣される自衛隊に、憲法違反の安保法制に基づいて「駆け付け警護」と「宿営地共同防護」という新たな任務を付与することを閣議決定しました。11月20日から順次派遣されています。
 しかし、南スーダンの置かれている状況は極めて深刻です。2016年7月に首都ジュバで大統領派(政府軍)と副大統領派(反政府軍)とが激しい戦闘を行い、数百人以上が死亡したとされています。もはや停戦合意は完全に崩壊していますし、中立性も維持できません。参加5原則の要件(@停戦合意、A受入同意、B中立維持、Cこれらの要件が欠ければ撤退、D武器の使用は要員防護のための必要最小限度)を満たしていないことは明白ですが、「(7月の戦闘は)戦闘ではなく衝突」「首都ジュバは比較的落ち着いている」などと言って自衛隊の派遣を強行しています。自衛隊員の命を余りに軽んじるものです。
 「駆けつけ警護」も「宿営地共同防護」もいずれも積極的に武器を使用することになりますが、「武力行使」に該当しうるもので、憲法9条1項に違反します。また、戦後初めて戦場で人を殺し殺される事態が生じることになり、日本の「平和ブランド」が完全に葬り去られます。
 すでに、他国も撤退を始めており、日本も直ちに南スーダンから自衛隊を撤退させるべきです。そして、平和憲法を持つ日本にふさわしい非軍事による支援の在り方を真剣に検討すべきです。

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「おひとりさま」の今後の準備
 −弁護士のご活用を−
弁護士 分部 りか


 私が、弁護士として主に取り組んでいる事件は、離婚と、高齢者の後見事案です。
 これまで、当事務所ニュースにおいても、何度か高齢者の問題を取り上げてきました。私の後見事案は、女性の高齢者が多く、いわゆる「おひとりさま」の方がほとんどです。在宅で過ごしておられる方から、施設で過ごしておられる方、収入状況も、ご自身の年金と預貯金で生活される方から、生活保護受給の方まで、とても多岐にわたっています。 
 後見事案という意味は、私が、後見人等として、裁判所から、この方たちの財産管理・身上監護(住まいをどうするか等を具体的に考えていくこと)業務を任されているということです。
 私が、この方たちの支援をするきっかけとなったのは、そのほとんどが、地域の高齢者サービスに従事する方たち(代表的なのが地域包括センターです。)が、心配して弁護士に相談した結果です。
 地域包括センターと、困っているお一人暮らしの高齢女性がうまくつながったからこそ、弁護士が、後見人等として財産管理・身上監護を行うことになったわけです。
 お一人暮らしの高齢者の中には、銀行の預金の出し入れがうまくできず(暗証番号を覚えておくことが難しい、どの印鑑が登録印かわからなくなる等)、こまめに銀行で引き出すということを諦め、現金を手もとに置く方が少なくありません。このようなお一人暮らしの高齢者が、空き巣や、消費被害にあってしまったらたいへんなことになります。
 被害に会う前に、財産管理を行う後見人等がついていれば守れたはずという事案も少なくありません。もっとも現在の制度は、財産管理能力等が低下したあと、自動的に後見人等が利用できるようにはなっていません。家族等からの申立てが必要になります。
 このような被害が起きることを防ぐために、元気なうちから、自分の能力低下に備えることは可能です。任意で弁護士等の専門家と財産管理契約を結んだり、自分が能力低下した場合に後見制度の開始がなされるよう事前に契約を締結するなどです。
 そのような備えをご検討される場合は、どうぞ一度弁護士にご相談ください。私たちが年を重ね、財産管理等の能力が低下することはやむを得ないことだと思いますが、備えることはできるはずです。

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