事務所だより
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2018年8月 暑中お見舞い申し上げます。
2018.08.01
暑中お見舞い申し上げます。
2018年8月

弁護士 大 脇 美 保
弁護士 喜久山 大 貴
弁護士 久 米 弘 子
弁護士 塩 見 卓 也
弁護士 中 島    晃
弁護士 中 村 和 雄
弁護士 諸 富    健
弁護士 吉 田 容 子
弁護士 分 部 り か
事務局一同



18歳以上は「大人」なの?
弁護士 大脇 美保


 本年6月13日、民法に定められている成人年齢が、20歳から18歳に引き下げられました。ただし、この改正民法の施行(実行)は2022年4月1日となっていますので、2022年3月31日までは、成人年齢は20歳ということになります。
 また、同時に、これまで、結婚できる年齢が男性18歳、女性16歳だったものが、男女とも18歳となりました。

 では、成人年齢が18歳になることにより、どのような点が違ってくるのでしょうか。まず、一番大きな点は、
・18歳以上ならば、親の同意なく、携帯電話の契約やローン契約ができるようになります。この点、いままででしたら、未成年の判断能力不足につけこんで契約するに至った場合に、親権者である親などによる契約の取消権がありましたが、それがなくなります。日本弁護士会連合会などは、この点を理由に成人年齢を18歳にすることに反対していました。18歳といえば高校生も多いので、政府の方も「消費者被害の防止などの環境整備を行う」と言わざるを得ませんでした。

 このほか、100以上ある関連する法律が変更され、
・10年のパスポートが18歳からとれるようになる
・性同一障害の方が性別変更を申し立てをする場合18歳以上からできるようになる
・重国籍の場合の国籍選択できる年齢などを現行法の基準から各2歳引き下げる
・公認会計士などの資格が18歳から取得できるようになる
などの変更があります。

 一方で、飲酒、喫煙、競馬・競輪などの公営ギャンブルができる年齢は20歳に据え置くことになっています。
さらに、最も議論が多い、「少年法」の適用年齢は、20歳未満から18歳未満にするかどうか今後も検討される予定ということです。

 最後に、「養育費は満18歳までになってしまうの?」という疑問についてご説明します。そもそも、民法では、養育費は成人に達するまでと決められているわけではありません。また、今回の民法改正の際の参議院の附帯決議には「成年年齢と養育費負担終期は連動せず未成熟である限り養育費分担義務があることを確認するとともに、ひとり親家庭の養育費確保に向けて、養育費の取決め等について周知徹底するなど必要な措置を講ずること」とあります。
 家庭裁判所の審判例では「子の監護に要する費用の分担義務の対象である子とは、未成熟子、すなわち自己の資産または労力で生活できる能力のない者をいう」とされています。現時点でも、子が成人(20歳)以上の場合でも、障がいや病弱、学生(浪人中を含む)などの場合に、養育費支払い義務を認めている審判例は数多くあります。しかし、親の収入など、いろいろな状況によりますので、ご心配な方は法律相談をお勧めします。

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30歳の大人と、子どもとの関わり
弁護士 喜久山 大貴


 先日、少年付添人(刑事事件)を初めて担当しました。それから、縁あって、中学3年クラスで「高校で学ぶべきこと」、高校3年クラスで「働く人のためのルール」について、それぞれ特別授業を行う機会をいただき、子どもとの関わりについて色々と考えることがありました。
 子どもは、大人と対等な立場にはなれず、十分な批判能力が備わっていないので、特別な配慮が求められます。また、大人の言動を柔軟に吸収し、大きな影響を与えかねないことにも、注意しなければなりません。
 付添人活動でも特別授業でも、うまく伝わった自信はないですが、「自己肯定感」、「生きる力」を育むことを裏テーマに据えていました。
 子どもが成長していく過程で、その後の人生を上手にやりくりするための体力、知力、社会性を身につけるのはとても大事ですが、上手くいかない時の対処法を学ぶことは、あまり明確に意識されていません。苦痛や困難に直面した時、そこに挑戦する力は、「自分ならできる」という自己肯定感だと思いますし、心身の健康を害さず、人格を傷付けられないよう、必死で逃げるのも、「自分を大切にしよう」という自己肯定感がなければできないことです。
 子どもたちには、成功体験や他者から承認される実感の中で、「生きる力」を育み、学校や、家庭、労働現場において、自分の身を守り、大切にし、よりよく生きることを最優先に考えてもらいたいものです。大人として、その手助けになるよう、子どもとの関わり方を模索していきます。

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ささやかな楽しみ
弁護士 久米 弘子


 同期の友人に刺激されて、朝のテレビ体操を続けています。内容は3つの基本パターンの組合せとプラス少々の10分間です。「ラジオ体操第1」と「ラジオ体操第2」はピアノのメロディーを聞くだけで、子どもの頃、夏休みに出席カードに判を押してもらった記憶と共に自然と体が動きます。「みんなの体操」の方は、まだおなじみではありませんが、手や腕、肩、首などを曲げたり伸ばしたりまわしたりします。ついつい体を動かすことが少なくなっているので、テレビでお手本を演じている女性たちのように格好良くはできませんが、無理のない程度で続けたいと思っています。
 頭の体操の方はクイズに凝っています。事務所でとっている新聞各紙のクロスワードパズル、漢字クイズ、間違いさがし、その他いろいろあります。中でも集中しているのが数独(数字クイズ)です。タテヨコ3行ずつの3箱合計81字分全部に1から9までの数字を入れていくクイズです。はじめはとても手間がかかりました。今はずいぶんコツが分かってきたので、ここにしか入らないという数字を見つけられるようになり、大幅に時間短縮です。それでも、上級になるとなかなかです。
 世の中、ウソやゴマカシがマスコミの報道にあふれています。不安や不愉快なことも増えて、ついつい体も頭も緊張し放しです。ささやかな楽しみを見つけて、いつでも元気で、自由に動けるようにしていたいと思っています。

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京大立て看問題に声明を出しました
弁護士 塩見 卓也



 京都大学では、百万遍交差点をはじめとする、学外から大学側がよく見える場所に、学生団体などが立て看を立てて、その時々の社会問題などに対する意見や、学内団体の活動をアピールすることが、何十年来にわたり行われてきました。かく言う私も、学生時代は、京大西部講堂の運営団体「西部講堂連絡協議会」の活動のために、百万遍交差点や西部構内に何度も立て看を立ててきました。その京大の立て看に対し、京都市が「景観条例」「道路法」を理由に難癖をつけ、あろうことか大学当局もそれに応じ、本年5月13日早朝、立て看を一斉撤去してしまうという事態が生じました。
 その事態に、当事務所の中島晃、鴨川法律事務所の尾藤弁護士と私が中心となり、大学における表現の自由に最大限の配慮がなされなければならないという憲法的価値観に基づき、京都市と京都大学に対し、立て看板撤去に関する措置の見直しを求める内容の、「京都大学の『立て看板』撤去問題に関するアピール」を作成し、京大出身弁護士に賛同を呼びかけ、5月22日に記者会見を行いました。準備期間の短い中、138名の京大出身弁護士の賛同を集めました。
 この声明は、本年2月に「立て看・吉田寮問題から京大の学内管理強化を考える緊急アピール」(私も呼びかけ人の1人です)を出していた「おもしろくも変人でもない京大」というHPに公開しています。是非ご一読を。                     
  
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京大立て看板問題に想う
弁護士 中島  晃


 1960年代から70年代にかけて、京都の大学では、どこでも立て看板があふれていた。それは、全国の大学で共通してみられる風景であった。
学生たちは、その立て看板を見て、世の中でいま何が問題になっているかを知ることができた。しかしいま、この立て看板が大学から消えようとしている。
 立命館や同志社大学では、数年前から立て看板が姿を消している。いまや学内でビラまきすらできない状況にあるという。
 そして、京都大学でも立て看板の撤去が始まっている。いま、立て看板撤去など、大学で表現の自由が圧殺されるという事態は、日本の民主主義にとってまことに危機的な状況である。
 商業宣伝などを目的とする立て看板が景観保全の観点から、制限をうけるのは、当然のことである。しかし、商業宣伝とは無関係な非営利の立て看板まで、景観保全を理由として取り締まりの対象とすることは、憲法上の重要な基本的人権である表現の自由を危うくするものである。
 いま大学で行われている立て看板規制は、営利目的か非営利目的かを問わず、一律に撤去しようというものである。しかし、こうしたやり方は、表現の自由と不可分の関係にある学問の自由をおびやかすことにもつながるものであり、まことに乱暴なものといわざるをえない。
 こうしたことから、これに対して黙っているわけにはいかないと考えて、京大出身の弁護士有志138人の連名でアピールを発表した。是非注目いただきたい。


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スウェーデンの「支え合う社会」に学ぶ
弁護士 中村 和雄


 6月10日から1週間ほど、日弁連調査団の一員として社会保障制度調査のためにスウェーデンのストックホルムに行ってきました。わが国で若者に希望をもってもらえる社会保障制度をつくっていくにはどうしたら良いのかを探るための海外調査の一環です。
 地元の若い人たちとの交流を深めたく、地元のセンター等を訪問して、直接若い人たちの考えていることやセンターに集まっている理由も聞くことができました。
 私たちは今までわが国では「若い人に対する対策が十分でない」と考えていましたが、スウェーデンでは政策立案過程に若い人たちが参加することや自主性を身に着けることを重視しており、若者自身も政策参加の力を身につけているとの印象を受けました。日本と根本的に違っているのは、若いころから何かに主体的に関わり運営していくことで民主制を学ぶ・体感できることが教育に組み込まれていることです。そういうシステムの上に今のスウェーデンの社会保障システムが成り立っていることが理解できました。「教育の目的は民主主義を学ぶこと」、「みんなでみんなの社会保障を支えるのがスウェーデンだ」、「高い税負担に不満はない。それがみんなにきちんと返ってくるから」、「高所得者から税負担が高すぎるとの不満を聞かない、支え合う社会の実現のためには必要だと理解している」、こんな発言が大人だけでなくこどもたちからも次々と聞かされるのです。
 大学生は月に15万円くらい国から奨学金がもらえ、そのうち3分の1が給付で、3分の2が貸与、利息は0.13%。授業料は無償であり、給付金・貸与金は、1人で暮らしていくための生活費。貧富にかかわらず、どの子もみんな大学で学ぶ権利が保障されているのです。
 4年に一度の国会議員選挙の投票率は8割を超え、20歳以下の若者の投票率も8割を超えます。全国の中学校・高校で国会議員選挙時に「学校選挙」という模擬選挙を実施し、各政党代表者の討論会も実施します。実際の選挙と同様の仕組みで選挙をおこない、結果は本物の選挙後に発表されます。また、こどもたちは日常的に政治について議論しているのです。
 スウェーデンにも新自由主義の影響は出てきています。移民問題を契機として、これまでの社会民主主義を否定する勢力も台頭しています。しかし、これまでに築きあげられてきた「スウェーデンモデル」である「支え合う社会」は強固に根付いており、そう簡単には崩壊しそうにないとの印象を受けました。10月4日の日弁連人権大会シンポジウム(青森)に向けて、今回の訪問調査報告をとりまとめ、わが国の政策形成のあり方に問題提起していきたいと思います。

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憲法改正の国民投票法ってご存じですか?
弁護士 諸富  健


 憲法改正の具体案が自民党から示されていますが、法律と違って国会だけでは決められません。主権者である私たち国民が、憲法改正に賛成か反対か一票を投じることになります。
 この憲法改正をするための手続を定めた法律が第一次安倍内閣の時に制定されました。実はこの法律、たくさんの問題があるのですが、未だに解消されていません。
 まず、最低投票率の定めがありません。例えば、投票率が50%であれば約25%の賛成で憲法が改正されます。次に、国会の発議から国民投票日までの期間が60日から180日以内と短いです。最短2か月で、憲法改正案についての賛否を判断しなければなりません。
 最近注目されているのが、テレビ・ラジオのCM規制の問題です。投票前14日間のみ、投票運動CMが禁止されています。投票日から15日以前は規制がありませんし、単なる意見表明のCMは投票日まで自由に流せます。テレビCMを広告会社大手の電通が支配している実態を考えると、圧倒的な資金力を誇る憲法改正賛成派のCMで独占されるおそれが高いです。
 その他、公務員・教員の地位利用規制や国民投票広報協議会の構成員の不公正な割り当てなど、国民投票法には様々な問題点が残されています。こうした問題点が解消されなければ、公正・公平な国民投票とならず、憲法が改正されてもその正当性に疑義が残ることになります。憲法改正の発議の前に、問題点を解消する国民投票法の改正が不可欠です。


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「別氏」をめぐる二つの訴訟は別物です!
弁護士 吉田 容子


 民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と規定しています。しかし、法律婚をしたカップルに「同氏」を強制すべき合理的理由はありませんから、この規定が人格権や平等権を保障した憲法に違反する可能性は高く、1996年に法制審議会(法務大臣の諮問機関)は別氏選択制を採用すべきだとして改正法案要綱を公表しました。しかし、以来20余年、「家族が崩壊する」などの声に阻まれて法改正は実現せず、制度の違憲性を主張した訴訟も、2015年12月、最高裁により棄却されました(但し、5人の裁判官は違憲性を認めています)。
 けれど、女性達とそのパートナーである男性達は、既に次の闘いを始めています。2018年3月に東京家裁と広島家裁に「別氏での婚姻届の受理を市区役場に命じる」ことを求めた審判を申し立て、5月に東京地裁と広島地裁に「選択肢なき夫婦同氏規定が憲法と条約に違反する」とした国家賠償請求訴訟を提起し、さらに6月に東京地裁に米国で法律婚をしているカップルについて婚姻関係確認訴訟を提起しました。是非、応援してくだい。
 ただ、気になる動きもあります。サイボウズの社長ら男女4人による「ニュー夫婦別姓」訴訟です。著名人が提起したということで話題を呼んでいますが、実はその請求内容は「夫婦別氏選択制」ではなく、「夫婦同氏強制制」を容認したうえでの「通称使用の拡大」であり、自民党保守派の見解とも一致しています。このような請求は、夫婦同氏強制制の根底にある人権問題をまったくなおざりにし、結果的に従来の差別を別の形で固定化し、本末転倒の結果につながりかねず、危険です。
 メディアの不正確な報道に踊らされることなく、内容を注視していきたいと思います。
 
 
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パワーシフトしてみませんか。
弁護士 分部 りか


 2016年から、一般家庭も、電気供給会社を選べるようになりました。私は、これまで供給を受けていた電力会社とは縁を切りたいと思い、まずはガス会社に電気供給を切り替えました。
 その後、様々な電力供給会社の情報を得ることができるようになり、再生エネルギーをメインとする会社にさらに変更しました。これをパワーシフトと呼ぶようです。(power-shift.org/)京都弁護士会も、2018年1月、みんな電力会社にパワーシフトしました。
 実は…私は小規模の自家発電をしてみたいと思い、本を購入してみたのですが、購入しただけで終わりました…。小学生でもできるというキャッチの本だったのですが、理解できず…この過程で、オフグリットという言葉を知りました。電力の供給には、供給するための送電線が必要です。送電線をグリットと呼ぶそうです。そして、自ら発電すれば、グリットにつなぐ必要がなくなることから、そのような生活をオフグリット生活と呼ぶそうです。原発を発電のメインとしている電力会社が、発電・送電・配電を独占していたことが再生エネルギ−を主な発電に転換していくことを困難にしていたということを知りました。
 パワーシフト、意外に簡単でした。再エネ電気は高いのではないかと思っていた私ですが、それも思い込みでした。みなさんも、パワーシフトしてみませんか。power-shift.org/で、電力供給会社を比較することができます。


 
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