事務所だより
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2015年1月 寒中お見舞い申し上げます。
2015.01.20
寒中お見舞い申し上げます
2015年1月

弁護士 大 脇 美 保
弁護士 久 米 弘 子
弁護士 塩 見 卓 也
弁護士 中 島    晃
弁護士 中 村 和 雄
弁護士 諸 富    健
弁護士 吉 田 容 子
弁護士 分 部 り か
事務局一同



婚外子相続差別違憲決定の影響
弁護士 大 脇 美 保


1.遅すぎた違憲判決
 2013(平成25)年9月4日、最高裁大法廷は、裁判官14名全員一致で、婚外子の
 法定相続分差別規定について、憲法14条1項(法の下の平等)に反するとして、
 違憲と判断しました。
 「婚外子の相続分差別規定」とは、民法900条4号但書のことで、「婚外子」の相続分を、
 いわゆる「婚内子」「嫡出子」の2分の1とするものです。
 この決定は、長い間差別に苦しんできた人たち、子どもを大切にしたいと思ってきた
 人たちにとって待ちに待ったものです。

2.その後の民法改正
 この違憲判決を受けて、2013(平成25)年12月5日、この差別規定を削除する
 民法改正が実現しました。1898(明治31)年の民法制定から115年、民法における
 象徴的な婚外子差別規定がなくなり、子どもの平等が明示されました。

 2013(平成25)年12月5日に成立した民法改正は、「嫡出でない子の相続分を
 嫡出である子の2分の1とする部分を削る」というものです。
 問題は、改正後の規定が2013(平成25)年9月5日以後に開始した相続について適用
 されるという点です。
 「相続が開始した時点」とは、被相続人が死亡した時点のことです。
 その結果、2013(平成25)年9月4日以前に被相続人が死亡した相続については、
 婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする旧規定が適用されるのが原則となります。

 ところが、この旧規定は、上記の違憲判決によりいわば修正され、2001(平成13)年
 7月以降に開始した相続については、婚外子の相続分は婚内子と同等に扱われます。
 一般に、改正された法律に遡及効はありませんが、2001(平成13)年7月時点で違憲
 であると最高裁判所が判断をしたことから、平等とする範囲が広がったものです。
 
 ただし、2001(平成13)年7月からこの違憲判決までに相続が開始し、遺産分割や
 法律関係等が「確定」した事案については、有効なものと扱われ、平等に処遇
 されません。
 これは、法的な安定性とのバランスをはかったものです。
 しかし、何をもって「確定」というのか、また2000(平成12)年10月から本決定で
 違憲とされた2001(平成13)年7月より前(同年6月)までの取扱いは、未確定な
 部分がありますので、ご不明な点がありましたら御相談下さい。

3.残された問題
 1996(平成8)年2月の民法改正案要綱では、@婚外子の相続分差別の廃止と並んで、
 A選択的夫婦別氏制度の導入が規定されていました。
 しかし、これに対しては、「家族の一体感が損なわれる」「家族の崩壊を招く」
 「不倫を助長する」などの反論が根強く、政府案としての国会上程を阻止されて
 きました。
 この点についても、「個人の尊重」の理念から早期の法改正が望まれます。

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「花子」と「白蓮」の時代の女性たち
弁護士 久 米 弘 子


昨年、好評のうちに終了した朝の連続テレビドラマ「花子とアン」の花子のモデル
村岡花子は、1893(明治26)年生れです。
ドラマの花子は貧しい小作農の娘で、小学校を卒業すれば家計を助けるために奉公に
出るのが当たり前の時代に、女学校の給費生となり、本格的な英語教育を受けました。
花子はこの能力を生かして翻訳家となり、戦後は「赤毛のアン」の翻訳出版で
大評判となります。
親友の白蓮のモデル柳原(宮崎)白蓮は1885(明治18)年生れ、伯爵家の令嬢で、
歌人として有名です。
それでは、この2人が生きた頃の日本は、女性にとってどんな社会だったのでしょうか。
今年は戦後70年を迎えますので、改めて母や祖母、曽祖母の時代を振り返ろうと
思います。

戦前の女性に選挙権や被選挙権がなかったことはよく知られています。
さらに、女性は政談集会に参加したり、政党や政治結社に参加することも禁止されて
いました。(女性達の運動によって、政談集会への参加禁止は、1922年に廃止されま
したが、政社参加禁止の廃止と選挙法の改正は戦後になってようやく実現しました。)
何よりも戦前の女性たちを制約していたのは民法の家族に関する規定でした。
「家」とその長である「戸主」を中心とするしくみ(家父長制度)は、「女三界に
家なし」とか「女三従の教え」という道徳のみならず、そうせざるを得ない法的な
制約を女性に強いていたからです。

女性は未婚の時には父や祖父の「戸主権」に従い、結婚すると「妻ハ夫ノ家ニ入ル」
「妻ハ無能力者」と定められて「夫権」に従い、夫に死別すると家督相続によって
戸主権と家の財産を単独相続した長男(子)に従わざるを得なかったのです。
もちろん、戦前にも花子のように恋愛結婚をしたり、仲良く互いを尊重し合う夫婦は
いたでしょう。しかし法律というのは、そうでない場合にどう定められていたかが
問題なのです。

白蓮は、実家の都合で若くして最初の結婚をさせられ、数年で子どもを置いて離婚
されます。母には子の親権はありませんでした。
その後、再び実家の都合で年の離れた九州の炭坑王と結婚しますが、帝大生と熱烈な
恋愛をして駆け落ちします。
当時、妻の不貞は夫からの離婚原因になるだけでなく、夫が告訴すれば妻もその
相手の男性も、姦通罪として処罰されました。夫の炭坑王が告訴せず、離婚にも
応じたので、白蓮と相手の男性は処罰されず、結婚もできましたが、世間の非難は
大変なものでした。

戦後、憲法14条及び24条を受けた家族法の全面改正によって、戸主制度は廃止され、
婚姻や離婚、親子、相続の規定で男女平等が実現しました
。刑法の姦通罪も廃止されました。しかし、まだ改正すべき事項は残っています。
又、何よりも、男女の経済的格差が、実質的な男女平等の実現を妨げているというのが、
私の実感です。

男女ともに平等で幸せな社会であるために、もう少し弁護士として働きたいと
思っています。



第2次安倍政権の労働法制改悪への動向
弁護士 塩 見 卓 也


今から6年前、2008年の年末は、「リーマン・ショック」や、それを原因とした
派遣労働者や有期雇用労働者の大量首切りに対応するために行われた「年越し派遣村」
があり、非正規雇用労働者の地位の不安定や、違法な労働者派遣の横行がわが国に
おいても広く認知されるようになりました。
その結果、非正規雇用労働者を保護するための法制度を整備すべしとの世論が高まり、
2012年には民主党を中心とする連立政権下で、内容は不十分とはいえ、改正労働者
派遣法をはじめとする非正規雇用労働者の保護強化の方向性を示す法改正が実現
しました。

それに対し、2012年末に発足した第2次安倍政権は、「労働ビッグバン」を掲げ大幅な
労働規制緩和を目論んだ第1次政権時と同様に、再び労働法制の大幅規制緩和方針を
示しました。
安倍政権は、政権発足以来、「産業競争力会議」や「規制改革会議」などの、労働者側
委員が入っておらず、逆に大手派遣会社パソナグループ会長の竹中平蔵などが委員に
入っている、財界側の意向のみ反映される諮問機関を通じ政策を作り、閣議決定し、
自らの政策としています。

労働者側の意見を事実上無視して、2012年法改正の成果を無にするような労働者派遣法
の改悪や、いわゆる「残業代ゼロ法案」、解雇の金銭解決制度などの成立を目論んで
います。
安倍政権の労働者派遣法改悪案は、2014年の通常国会と臨時国会に、二度提出され、
二度とも廃案となりました。与党が国会で圧倒的多数を占める中で、この法案を廃案に
できたのは、労働組合や弁護士会の強い反対運動の成果でもあります(私や当事務所の
中村弁護士は、日弁連や京都弁護士会の反対集会などに何度も関わりました。)。

他方で、法案の内容自体があまりにもお粗末だったという側面もあります。
塩崎厚労大臣は、国会質問で法案内容を理解できていない誤った答弁を行い、後で
厚労官僚から訂正されるという失態まで演じました。竹中をはじめとする人材ビジネス
からの政策のごり押しに対し、一部の厚労官僚が反発していることすらうかがえる
状況です。

2度も廃案に追い込まれた労働者派遣法改悪法案も、安倍政権が続くかぎり、再び
2015年通常国会に提出されるおそれがあります。また、現在安倍政権は、第1次政権の
ときに「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」と呼ばれ国民の大反発を喰らい、法案が
できていてもそれを国会に提出することすらできなかった「ホワイトカラー・エグゼン
プション」法案を、「時間ではなく成果で評価される制度」であるとのまやかしを
述べながら(現行法でも法定労働時間内なら「成果で評価される」賃金支給はいくら
でも可能です。つまり、安倍政権のいう「成果で評価される制度」は長時間残業を
行うことが暗黙の前提です。)再び2015年通常国会に提出することを目論んでいます。

全ての労働者が、安定した雇用と人間らしい生活のできる労働条件の下で、長時間
労働などで健康・生命を害することなどなく働けるよう、皆さんも安倍政権の
労働法制改悪政策に反対の声を上げて下さい。

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寿岳文章先生の「書」について
弁護士 中 島   晃


私たちの事務所の相談室に、寿岳文章先生(1900〜1992)の「書」が飾られている。
「万物ヲ生ミ育テル母平和」と書かれ、寿岳文章という署名と、「寿」という刻印が
押された色紙が額装されて、事務所の壁にかけられている。
この「書」は、事務所開設のお祝いとして、文章先生の娘さんである寿岳章子先生
(1924〜2005)から届けていただいたものである(以下、文章先生とお呼びすることを
お許しいただきたい)。

文章先生は、イギリス文学の研究者として知られ、ウィリアム・ブレイクの詩を
日本に紹介し、私家版でブレイクの詩の翻訳を刊行しているほか、晩年にはダンテの
「神曲」の全訳に取り組まれ、これを完成されている(1977年)。
なお、余談ながら、作家の大江健三郎は、若い頃からブレイクの作品を読み続けてきた
と語っている。

その一方で、文章先生は民芸研究家の柳宗悦(1889〜1961)などとも親交があり、
各地に埋もれている、無名の民衆の手によって生み出されたさまざまな伝統工芸に
すぐれた芸術的価値を見出して、これを掘り起こすための調査研究に取り組んでこられた。
なかでも、日本の和紙に関する研究の第一人者であり、お連れ合いの寿岳しづさん
(日本ライトハウスの創立者岩橋武夫さんの妹)と二人で全国の紙郷行脚を行い、
これをまとめた「紙漉村旅日記」(私家版)を刊行(1943年)するなど、和紙研究に
対する熱意は高く評価されている。
とりわけ、文章先生の和紙研究で注目されているのは、新村出(1876〜1967)とともに、
杉原紙の発祥地が、播磨国杉原谷であることを明確にしたことである。
この文章先生の杉原紙の研究を契機として、一旦途絶えていた兵庫県加美町(現在の
多可町加美地区)での杉原紙生産が再興された。

さて、最近、日本の和紙がユネスコの無形文化遺産に登録された。
このことは、長年にわたって、全国各地の手漉き和紙の調査に取り組んできた
文章先生の和紙研究の貴重な成果が、こういう形で結実したことを示すものに
ほかならない。その意味で、文章先生やしづさんも泉下でさぞかし喜んでいるものと
思われる。

ただ少しばかり気になることがある。
今回の無形文化遺産の登録の対象となったのは、石州半紙と本美濃紙、細川紙の
三つである(正確にいうと、石州半紙は2009年に登録されており、今回は本美濃紙と
細川紙が追加して登録されたものである)。しかし、日本の和紙がこの3つに
限られるわけではない。
むしろ、今回の無形文化遺産登録は、この3つの和紙に代表される日本の和紙全体、
すなわち「日本の手漉和紙技術」が無形文化遺産に登録されたととらえるべきものと
いえよう。

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ダンス規制削除の風俗営業法改正までもう一息
弁護士 中 村 和 雄


突然の衆議院解散により、ダンス規制を削除する風俗営業法の改正案も廃案となって
しまいました。
この間ダンス営業を規制してきた風俗営業法について、大きな運動の高まりの中で
改正作業が進められ、10月24日には政府が「ダンス規制」を削除する風営法改正案を
閣議決定し、先の臨時国会で可決成立する予定となっていました。残念ではありますが、通常国会では成立する見通しです。

改正案の内容としては、法律から「ダンス」の文言が外され、クラブ営業は店内の
明るさや営業時間に応じて、新設の「特定遊興飲食店営業」を含む3つの類型に
分けられることになりました。
そして、ダンス教室などの4号営業については完全に削除、つまり規制の対象から
外すという歴史的な改正案となりました。これは、私たちLet’s DANCE署名推進委員会
及びLet's DANCE法律家の会が、2012年の運動開始当初から訴えてきたダンス規制撤廃
や超党派の国会議員で構成されたダンス文化推進議員連盟、さらには圧倒的な世論の
方向性と合致するものです。今日までダンス規制撤廃に向けてご協力をいただいた
すべての方々に感謝します。

もっとも、ダンス規制撤廃の願いは、「ダンス」の文言を法文から削除することだけでなく、健全なダンス文化が発展し、関連する経済活動を活性化させることにあります。
この点で、改正案は、不十分点を有しています。
改正案は、「特定遊興飲食店営業」としての規制を新設するものとしています。
クラブなどで深夜に酒類提供を行う営業は、かかる類型としての規制を受けることを
想定しているようです。
特定遊興飲食店営業については、許可を取得すれば午前0時から6時までの深夜時間帯の
営業が可能となるとされています。
これまで3号営業としては禁止されていた深夜営業が認められたことは前進です。

しかし、「遊興」という用語は曖昧不明確なものであり、あまりに広範な規制として、
憲法上保障された基本的人権を制約する危険があります。
「遊興」概念を明確化して規制対象営業の範囲を特定し、過度に広範な規制とならない
ようにするなどの対応が必要です。

また、営業所面積をはじめとする営業所の構造要件や営業可能地域を定める営業制限
地域の設定などについては、これまで問題なく営業している事業者が、改正によって廃業
しなければならないような事態とならないよう、関係法令を整備することが必要です。

以上のほかにも改正案が成立した場合に整備が必要な関連法令は多岐にわたっています。これらの規制が不当な内容とならないよう関係機関と協力しながら通常国会の審議を
しっかり見守っていく所存です。引き続くご支援をお願いします。


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混ぜると、もっとキケン!
 〜特定秘密保護法と集団的自衛権〜
弁護士 諸 富   健


弁護士 諸富  健
2014年12月10日、特定秘密保護法が施行されました。そして、同年7月1日に閣議決定された集団的自衛権の行使に関する法整備が、一斉地方選挙後の通常国会で審議されると報道されています。特定秘密保護法が施行される下で集団的自衛権が行使されることになったらどんな恐ろしいことが待ち受けているか、私が所属している「明日の自由を守る若手弁護士の会」(略称「あすわか」)がチラシを作成しました。このチラシで紹介されている4つのケースについて解説します。

【case.1】
集団的自衛権を行使するかどうかについて、政府は、閣議決定で示された武力行使の新たな三要件に該当するかどうかを判断します。ところが、その根拠が特定秘密に指定される可能性があります。そうなれば、政府が集団的自衛権を行使すると決定しても、それが正しい判断なのかどうか検証することができません。

【case.2】
集団的自衛権の行使が適切な根拠に基づくものか知りたいと考えた国民が調査するとします。すると、その行為が、特定秘密の「取得」や「漏えいの教唆」に当たるとして、処罰されるかもしれません。


【case.3】
実は、集団的自衛権の行使の根拠とされた事実がにせ情報だった。そのことを知った公務員等が良心の呵責に耐えかねて、国民に知らせなければと考えるとします。しかし、その情報を国民に知らせる行為は特定秘密の「漏えい」として、重い処罰の対象となりえます。

【case.4】
特定秘密に指定された集団的自衛権行使の根拠は、ほとんどの国会議員にさえ知らされません。設置が予定されている情報監視審査会に所属する衆参8人の委員には知らされる可能性はありますが、これら委員も外部に知らせることができません。外に漏らすと、国会議員でも処罰される可能性があるのです。

民主党の階議員が、臨時国会の予算委員会でこのチラシを用いて質問されました。すると、政府は、いずれのケースも「あり得る」と答弁したのです。つまり、その根拠が本当に正しいものかどうか国民には全く分からないまま、集団的自衛権が行使される=海外で武力行使されて戦争に巻き込まれる事態が生ずるのです。
単独でも危険な特定秘密保護法と集団的自衛権が混ぜ合わさるとどれほどキケンなものか、多くの人に知っていただき、そのような事態を阻止する取り組みを強めていただきたいと思います。なお、チラシは、あすわかのホームページから保存できますので、是非ご利用下さい(「あすわか」で検索して下さい)。


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性犯罪処罰規定の見直し
弁護士 吉 田 容 子


2014年11月、法務省で「性犯罪の罰則に関する検討会」が始まった。
もともと現行刑法の性犯罪規定には様々な問題があることが指摘されていたが、
「強姦罪の法定刑の下限が強盗罪のそれよりも低いのはおかしい」という松島前法務大臣の
指示により、ようやく検討が開始された。検討会の委員は研究者及び実務家(弁護士・
裁判官・検察官)12名で、うち8名が女性である。
日弁連からは女性弁護士2名が委員となっており、私はそのバックアップメンバーの
一人である。

検討される論点は多岐にわたる。専門的になるが簡単に紹介させていただくと、

ア、強姦罪の法定刑の下限(3年)は強盗罪のそれ(5年)よりも低く、これを
 引き上げるべきではないか。
 強姦犯人が強盗をした場合は強姦罪と強盗罪の併合罪になるが、強盗犯人が強姦を
 した場合は強盗強姦罪として特に重い罰則が規定されており、アンバランスではないか (前者についても重い罰則を規定すべきではないか)。

イ、強姦罪の主体等として、現行法は行為者男性・被害者女性に限定しているが、
 これを性差のないものとすべきではないか。また、婚姻関係の破綻の有無を問わず
 配偶者による強姦が犯罪であることを明記すべきではないか。

ウ、現行法では性交以外の性的行為は強制わいせつ罪で処罰されるが、性交類似行為に
 ついては新たな犯罪類型を設けて強制わいせつ罪より重い刑で処罰すべきではないか。

エ、現行法及び判例上、強姦罪等が成立するためには「被害者の抗拒を著しく困難
 ならしめる程度の暴行または脅迫」を用いることが要件とされているが、この要件を
 緩和すべきではないか。
 そもそも暴行又は脅迫を要件とすることは適切か。
 準強姦についても要件を見直すべきではないか。

オ、親子関係など一定の地位や関係性を利用して従属的な立場にある者と性的行為を
 行う類型について、新たな犯罪類型を設けるべきではないか。年少者の被害は別の
 犯罪類型とし、重い罰則を科すべきではないか。

カ、現行法では、暴行・脅迫が無くても強姦罪等が成立するのは被害者が13歳未満の
 場合とされているが、この年齢を引き上げるべきではないか。

キ、現行法では、(準)強姦罪及び(準)強制わいせつ罪については、被害者の告訴が
 公訴提起の要件とされているが(親告罪)、この規定を廃止すべきではないか。

ク、特に年少者が被害者である性犯罪について、一定の期間は公訴時効が進行しないと
 すべきではないか、あるいは公訴時効を撤廃すべきではないか。

かなり本格的な検討内容である。
既に被害者やその支援者からのヒアリングも実施された。
今年春には検討結果がまとめられ、その後、法制審議会での検討を経て、国会に法案
提出されるはずである。
長年、待ち望んだ改正の機運を活かすため、微力ながら尽力したい。


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「マタ・ハラ」に関する最高裁判決をうけて
弁護士 分 部 り か


「マタハラ」とはマタニティハラスメントの略で、働く女性が妊娠・出産をきっかけに
職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、妊娠・出産を理由とした解雇や雇い止め、
自主退職の強要で不利益を被ったりするなどの不当な扱いを意味します。

まさにこのマタハラを受けたとして提訴した裁判の最高裁判決が平成26年10月23日に
だされました。
病院に雇用され副主任の職位にあった理学療法士が妊娠中の軽易な業務への転換に
際して副主任を免ぜられ、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから、
勤務先の病院に対して、副主任を免じた措置は雇用の分野における男女の均等な機会
及び待遇の確保等に関する法律9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して、
管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた
事案でした。

最高裁判所は、「女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業
又は軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、同項に
違反するものとして違法であり、無効であるというべきである。」と判示しました。
すなわち、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主
の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるとしました。
この判決は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律を
元に判断をしています。
この法律は、女性が雇用されるときや就業中に、女性であることや妊娠・出産を理由
に不利益な扱いをすることを禁ずる法律です。
そして最高裁判所は、この法律にも基づき、病院に雇用され副主任の職位にあった
理学療法士が妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ、育児休業の
終了後も副主任に任ぜられなかったことは不利益に当たると判断したのです。

女性が妊娠すると、体にさまざまな変化が訪れます。そして、その変化はさまざまです。つわりに悩む人、逆子になって安静を求められる人、働きつづけておなかがはり、
流産の危険にさらされる人もいます。
このような妊娠期間中に、これまでの働き方と同じ働き方ができるわけありません。

では、妊娠したら、以前と同じような働き方ができなくなるから、周囲に迷惑が
かかるのでしょうか。
迷惑をかけるから仕事をやめなくてはいけないのでしょうか。
労働基準法という法律は、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、
他の軽易な業務に転換させなければならない。」と定めています。
なので、妊娠している女性は、法律上の権利として、軽易な業務に転換してほしいと
いうことができるのです。
法律は、女性たちに、妊娠し、子を産み育てる際に、今まで通りに働くことを
想定していません。

しかし、現実はどうなのでしょうか。
マタハラNETには多くの方の体験談がのっています。
妊娠しても今まで通り働くことを求められ、流産した方、今まで通り働けないから
事実上解雇された方たちの体験談です。

京都弁護士会では、マタニティハラスメントに関するシンポジウムを企画しています。
2015年2月21日午後1時半より、京都弁護士会館です。《終了しています》

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