事務所だより
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2016年1月 寒中お見舞い申し上げます。
2016.01.20
寒中お見舞い申し上げます
2016年1月

弁護士 大 脇 美 保
弁護士 久 米 弘 子
弁護士 塩 見 卓 也
弁護士 中 島    晃
弁護士 中 村 和 雄
弁護士 諸 富    健
弁護士 吉 田 容 子
弁護士 分 部 り か
事務局一同



「マイナンバー」ってどうなんですか?
弁護士 大 脇 美 保


○マイナンバーって何ですか?
マイナンバーとは、日本に住む赤ちゃんからお年寄りまで、すべての国民・外国人に
割り振られる12ケタの番号です。
名前や住所が変わっても生涯変わらないとされています。
私たちには、すでに暮らしのさまざまな場面で住民票コード、基礎年金番号、健康保険証の
記号・番号等いろんな番号がふられ、個人情報を管理されていますが、これらを
ひとつの番号をキーにして簡単に「名寄せ」できるようにするというイメージです。
これは個人情報を活用する側にとっては確かに便利ですが、プライバシーの侵害、
国家による管理統制の強化、なりすまし詐欺などの犯罪の危険の増大と表裏一体です。

○どんな通知がくるの?
最初に郵便書留で届くのは、番号を知らせる「通知カード」です。
紙製で、大きさはキャッシュカードと同じ。番号・氏名・住所・生年月日・性別が
印刷されています。中を確認したら、なくさないように保管しましょう。
この番号は、当面、税・社会保障・災害対策の3つの分野で使われます。
例えば、児童扶養手当の支給申請などの場面でマイナンバーを書くよう求められます。
「マイナンバー制度に反対だから、通知カードの受け取りを拒否したい」という方も
おられると思います。
「通知カード」を拒否しても罰則はありませんが、あなたに番号がふられ、
管理・利用される事実は変わりません。
後になって自分の番号が知りたくなったときに、自治体に問い合わせ、手数料を
払うなどの手間と負担が発生する可能性もあります。
これに対して、「個人番号カード」は2016年1月から希望者に対して発行されるもので、
顔写真付きのプラスチック製カードで、ICチップが内蔵されています。
このカードの用途は当面は身分証明書が中心なので、作らなくても当面は
不便がないと言えます。紛失等管理が心配な方は、あえて発行申請する必要は
ありません(私も当面は申請しないつもりです)。
カードを紛失した場合には専用のコールセンターに連絡する必要があります。
悪用の危険がある場合は、番号を変更する制度があります。

○今後はどうなるの?
安倍政権はマイナンバーを経済成長戦略の観点からも重視し、官民での利用を
広げていくとしています。
日本年金機構の情報流出事件を受け、年金番号との情報連携は当面凍結しますが、
個人の銀行口座(当面は任意。2021年以降に義務化を検討)やメタボ健診、
予防接種履歴情報などがマイナンバーで管理されます。やがては民間企業にも
番号利用を広げていく構想を、政府は描いています。
また、マイナンバー制度はたいへん大がかりなもので、国はシステム構築や
カード発行経費、広告費用などに、税金から3400億円を初年度だけでもつぎ込みます。
民間も膨大な出費を余儀なくされます。
その「特需」で、一部の大企業は大儲けをたくらんでいるのです。
やはり、今後は制度の凍結・中止を求めていくしかありませんが、日々の対応としては、
個人の情報が漏えいしたり、悪用されたりしない注意が必要です。
心配な方はこれも「法律相談」のひとつですから、ご相談下さい。 


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認知症の人と家族の法律問題
弁護士 久 米 弘 子


高齢化に伴って認知症の人とその家族の悩みやトラブルが増えています。
一口に認知症と言っても、もの忘れが多くなったという程度から、理解力や判断力が
低下したり、被害妄想や徘徊など介護する家族がどう対応してよいのかわからずに
苦悩するという症状までいろいろです。

1、認知症の人の行為に関する法律問題
(1)一人暮らしの高齢者をねらった訪問や電話での詐欺が多発しています。
親切を装って、不必要な家の修理をもちかけて次々と多額の費用を払わせたり
、息子が交通事故をおこしたとか勤め先で使い込みをしたなどといって、親から
弁償名目でお金を振り込ませたりするケースです。
弁護士を詐称することもあり、油断できません。
早く発見できれば、警察に届けて振込口座を凍結してもらったり、工事業者を相手に、
認知障害による契約の無効を主張して支払金の返還を求めたり、残金の支払いを
拒否できる場合があります。

(2)高齢者の窃盗(特に万引き)が増えている、再犯も多い、という報道がありました。
コンビニなどでわずか数百円の食べ物などを万引きして何度も現行犯逮捕される
ケースです。
高齢者の万引きには、認知症の症状もあるので、処罰ではなく、治療や介護施策の充実が
ぜひとも必要だと思います。

(3)認知症で自分の行為が理解できなくなっている人が他人に損害を与えた場合、
本人に責任を問うことができないので、監督責任のある人が損害賠償義務を負うことが
あります。
徘徊をする妻のおこしたケースで、同居の高齢の夫に多額の損害賠償を命じたケースが
ありました。
介護する家族の悩みや苦しみに対する無理解と施策の貧しさを含めて議論が
沸騰しています。

(4)介護者や病院・介護施設による虐待や事故の問題もあります。

2、認知症の人の財産管理をめぐる法律問題
(1)金銭管理が難しくなった親のために、息子や娘が預金通帳とキャッシュカードを
預かって、日常生活の面倒をみることがあります。
きょうだいの仲がよければ、親の面倒をみてもらってありがとうというところですが、
その親が亡くなって、相続問題でもめると、預金からの出金と使途が問題にされがちです。
トラブルを避けるためには、簡単な出納帳でもよいので使途をメモし、なるべく
領収書も残すようにした方でよいでしょう。

(2)認知症の人のためには、家庭裁判所の成年保佐人や成年後見人の選任申立が
あります。
成年保佐人や成年後見人には配偶者や子など家族が選任される場合と弁護士や
司法書士など専門家が選任される場合があります。

3、認知症の人の相続をめぐって
認知症の親が亡くなって、相続でトラブルになるケースはたくさんあります。
遺言書があっても、その作成時期や内容によっては、有効性が問題になることがあります。
遺言書を作るなら、なるべく元気な間に、できれば公正証書遺言にしておくことを
おすすめします。
又、親の介護や援助を担当したか(寄与分)、親の生前に特別に贈与や援助を受けた者が
いるか(特別受益)なども、相続で問題になります。
親の生前から相続人が仲良く助け合えているとトラブルにならないのですが、
むずかしいですね。

4、京都弁護士会では、1月23日に、「認知症の人と家族の会」の代表見国生さんを
招いて講演していただきます。ぜひご参加下さい。

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韓国映画『明日へ』と現在進行中のストライキ
弁護士 塩 見 卓 也


『明日へ』(原題『カート』、監督プ・ジヨン)という韓国映画が、全国の東宝シネマズで
上映されました。
この映画は、かつては『外泊』というドキュメンタリー映画(2009年、監督キム・ミレ)でも
採り上げられた、2007年の韓国で実際にあった、「イーランド闘争」という労働争議を
題材にした映画です。
「ホームエバー」というスーパー・マーケットを経営するイーランドグループは、
レジ係の外注化や新賃金体系で、有期雇用の労働者の大量首切りや賃金差別の固定化を
図ろうとしていたところ、2007年6月30日夜、500人の女性労働者たちが、
その差別的扱いに怒り、ホームエバーのカウンターを占拠しました。
これが、実際にあった「イーランド闘争」でした。
ドキュメンタリー映画『外泊』では、マーケットに毛布を敷きつめ、家を離れ、
「外泊(泊まり込み)」を始めた女性労働者たちの闘いを描いていました。
『明日へ』は、その実話である労働争議を題材に、韓国のトップスター達の出演で
映画化されたもので、韓国では大ヒットしたらしいです。

ネットで観たこの映画の予告編動画は、私のような労働弁護士には、それだけでぐっと
来るものでした。
ということで、久しぶりに映画館にまで行って映画を観てきました。
「人間として扱って欲しい、私たちの話を聞いて欲しい」と訴えながら、もともとは
労働運動の素人だった女性達が労働組合を結成し闘う姿に、私には終始涙が止まらない、
いい映画でした。
「争議権」は憲法で保障された労働者の権利です。
経済的・社会的強者である使用者に対し、団結と連帯によって渡り合い、生活を
向上させていくことは、本来労働者にとって非常に重要なことです。
しかし、わが国では、すっかり「職場占拠を伴うストライキ」のような、先鋭的な
労働争議を労働組合が実行するということが少なくなってしまいました。

そんな中で、現在京都では、労働弁護士歴10年の私にとっても初めての、
映画『明日へ』と同じような、「職場占拠を伴うストライキ」という本格的な
労働争議が行われています。
2015年5月、京都市からごみ収集の委託を受けていたある会社の社長が
産業廃棄物処理法違反で逮捕されました。
このことで、この会社は京都市からごみ処理事業者の許可を取消されるおそれが強まり、
従業員の間で雇用不安が拡がりました。
そこで、従業員達は、労働組合である「きょうとユニオン」に加入し、分会を結成し、
会社に対し雇用責任を果たすよう求める団体交渉を行いました。
団体交渉は、第2回団交までは通常に開催され、社長は、自らの落ち度で事業継続が
困難になったことについて謝罪し、当面の間仕事がなかったとしても給料を支払うことを
約束する労働協約も締結しました。

ところが、9月に入ってから、社長は突然雲隠れして、書面にて団交で約束した内容を
全て破棄すること、以後の団体交渉を拒否することを通告し、さらに9月11日には
事業許可取消を理由に組合員に解雇を通告してきました。
組合は、9月7日から職場占拠を伴うストライキに突入しました。
会社からは、建物明渡しを求める仮処分申立などの法的手続がとられましたが、
私が組合側代理人として活動し、第1審では仮処分却下決定を勝ち取りました。
この原稿を校了する時点で、既に職場占拠は約90日に及んでいます。

一方的な使用者側の落ち度によって雇用を失うような事態になった組合員達の訴えは、
切実です。
会社は、少なくとも団体交渉で約束した範囲についての雇用責任を果たすべきでしょう。
まだ続いている争議ですが、何とかいい結果が出るように頑張りたいと思います。

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シールズの若者は“ジコチュー”か
 −三国連太郎のことにもふれて
弁護士 中 島   晃


昨年、戦争立法に反対するシールズの若者を“ジコチュー”(自己中心的)といって
批難した、滋賀県選出の国会議員の発言が注目を集めた。
ところがその後、彼がおよそ国会議員にはふさわしくない、とんでもない人物であることが
判明した。
かえって、議員辞職を勧告されながら、これを拒否している彼こそ非常に自己中心的な
人間ではないだろうか。

さて、戦争はいやだという、シールズの若者は、はたして自己中心的なのだろうか。
明治憲法のもとで、「臣民」は兵役の義務を負い、現人神(あらひとがみ)である
天皇の名のもとに、徴兵制によりいやでも戦場に送られ、「教育勅語」によって、
お国のために命をささげることが最高の美徳とされた。
ところが、戦時下で、徴兵を拒否して逃げ出した人間がいる。
それは、映画「釣りバカ日誌」で、主人公のハマちゃん(西田敏行)が勤める
ゼネコン・鈴木建設の社長スーさんを演じた三国連太郎(1923〜2010)である。

彼は、おそらく被差別地域の出身ということで、子供のときからさまざまな差別を
うけて育ってきたのではないだろうか。
こうしたことから、お国のために命を投げ出すことなど、真っ平ご免だと思って、
赤紙(召集令状)が来たことを知って逃げ出したと思われる。
しかし、九州から朝鮮半島を経て中国に渡ろうとしたときに、憲兵に捕まり連れ戻されるが、
処罰をうけずに兵隊として、中国大陸の前線に送られる。
そこで、身体を壊し、熱病にかかる(おそらく、軍隊でリンチを受けたのではないかと
思われる)。
とうとう死んだと思われ、焼き場に運ばれたが、焼かれる寸前に息を吹き返し、
九死に一生を得たという過酷な体験をしている。

戦後、日本国憲法は、戦争の放棄(憲法9条)と、全ての国民が個人として尊重され、
生命、自由、幸福追求の権利を有することを定め(憲法13条)、
「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないように決意し」、
「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを
確認」(憲法前文)している。

こうしたことから、私たちが戦争はいやだと声を大にしていくことこそ、
憲法で保障された侵すことのできない国民の基本的人権なのである。
そのことに確信に持って、戦争立法反対、戦争法廃止の声をあげ続けることが、
いま何よりも大事だと考える。詩人茨木のり子の、
「人々は怒りの火薬を/しめらせてはならない/まことに自己の名において立つ日のために」
という言葉を胸にきざんで。

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「京都市公契約基本条例」は未完成
弁護士 中 村 和 雄


■昨年10月29日、京都市会は全会派の賛成により、「京都市公契約基本条例」を
可決しました。
本条例は、市の説明によれば、「市が締結する公共工事や業務委託等の公契約の
発注に関する基本理念その他の基本となる事項を定め、本市及び受注者の責務を
明らかにすることにより、市内中小企業の受注機会の増大、公契約に従事する労働者の
適正な労働環境の確保、公契約の適正な履行及びその質の確保並びに社会的課題の
解決に資する取り組みをより一層推進するために、公契約に関する総合的な条例」です。
この条例によって公契約にあたっての市の基本理念を定めた点は評価できるものです。
しかし、この条例はその名の通り「基本条例」に過ぎず、公契約条例と言うには
値しないきわめて不十分な内容のものです。

■90年代以降の「構造改革」路線で、地方自治体では経費削減を目的にした
公共サービスの民間委託や低価格の物件調達が広がり、関係する労働者の賃金低下を
もたらしてきました。
「官製ワーキングプア」を生み出すだけでなく、公共工事の質の低下を招くという
ところまで問題は深刻化しています。
こうした状況を打開するため、適正な賃金の導入を位置づけた公契約条例を
求める運動が全国に広がり、賃金規定を盛り込んだ条例が千葉県野田市を先駆けとして
全国で制定されてきました。賃金規定は公契約条例の核心部分です。

ところが、今回成立した京都市公契約基本条例の場合この核心部分がありません。
また、本条例では、中小企業の受注拡大、労働者の適正な労働環境の確保、
公契約の適正な履行を掲げるなど、条例案の方向性は間違っていませんが、
その実効性については疑問です。市や受注業者が「努める」とあるだけです。
義務や権利規定のないものは「条例」と呼ぶには値しません。
本条例は、理念を定めた「宣言」に過ぎません。

■近畿でも昨年から今年にかけて兵庫県三木市、加西市、加東市で公契約条例が
成立しました。
賃金規定もしっかりと入っています。
これから各地で賃金規定が入った公契約条例の制定が相次いでくるはずです。
公契約条例の制定は、4年前の京都市長選挙において候補者であった私が
重点政策として掲げたものです。格差と貧困が拡がるわが国において、
ワーキングプアをなくし地域経済を活性化するためのとても有効な政策です。
現市長は今年2月の京都市長選挙を前に形だけの条例をつくったものです。
京都市長選挙に勝利し、京都でも賃金規定がきちんと入った公契約条例の名に値する
条例制定に向けて運動していきましょう。


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安保法制廃止へ向けて
弁護士 諸 富   健


2015年9月19日未明、戦争法とも称される安全保障関連法
(以下「安保法制」といいます。)が成立しました。
みなさんは、この歴史的な日をどのような思いで迎えられたでしょうか。

ここで、安保法制の内容について簡単に見ていきます。
安保法制は、新設される国際平和支援法と10本の法律を改正する平和安全整備法の
2本から成ります。いずれの法律によっても自衛隊の活動範囲が飛躍的に拡大し、
日本国憲法の下では到底許されるものではありません。
まず、歴代政府も認めてこなかった集団的自衛権の行使が認められます。
これは、日本が武力攻撃を受けたときに反撃する個別的自衛権とは異なり、
日本が武力攻撃を受けなくても、武力攻撃を受けた他国と一緒になって反撃することを
認めるものです。
海外での武力行使を認めるもので、明確に憲法9条に違反します。

次に、戦闘地域で弾薬を提供するなど、他国軍隊への支援活動が拡大されます。
このような活動は他国の武力行使と一体化するものであり、憲法9条1項に違反します。
また、PKO活動でも駆け付け警護や治安維持活動ができることになり、自衛隊による
武器使用の場面が拡大します。これまでのPKO活動を大きく変質させるもので、
人を殺し殺される危険性が高まります。
さらに、平時でも武器等を防護する任務が与えられます。
武器等といっても、軍艦や戦闘機まで含まれますので、その防護活動はなし崩し的に
集団的自衛権の行使を認めることにもなります。

このようなキケン(危険)でイケン(違憲)の内容が国会審議を通じて明らかになるにつれ、
市民の運動は安保闘争時を凌駕すると言われるほど大いに盛り上がりました。
私たち弁護士のみならず、学者や歴代内閣法制局長官、元最高裁判所長官まで
オール法曹が反対の声を挙げ、さらにこれまで声を挙げることが少なかった学生や
ママさんを含む広範な市民のみなさんが、集会やデモ、街宣に集い、自らの言葉で
思いの丈を述べる光景が全国のあちらこちらで見られるようになりました。
安保法制は成立しましたが、こうした市民の力が政府・与党をぎりぎりのところまで
追い詰めたことは間違いありません。
そのことは、参議院特別委員会での強引な「可決」や野党による臨時国会召集要求を
無視する姿勢などにも現れています。

憲法違反の法律をそのまま放置しておくわけにはいきません。
この夏培ってきた市民の力をさらにパワーアップさせて、安保法制廃止に向けた取組に
注力していく必要があります。
そのためには、一人一人が学び伝える活動に地道に取り組んでいくより他にありません。
学習会や憲法カフェなどご要望がありましたら、お気軽に当職までお問い合わせ下さい。
安保法制が廃止されるその日まで、共に頑張りましょう!

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リベンジポルノ、インターネットを利用した性加害
弁護士 吉 田 容 子


「リベンジポルノ」とは、嫌がらせの目的で、元交際相手や元配偶者の性的な
写真や動画をインターネット上に公開する行為、あるいは公開された写真や
動画のことをさします。復讐ポルノとも呼ばれます。
別れた交際相手や配偶者に対して恨みや害意を抱き、復讐として、交際時に撮影した
相手方の性的な写真や動画を第三者にばらまくという事件は、これまでもありました。
しかし、現在、「リベンジポルノ」がこれほど大きな問題となっている背景には、
携帯電話やスマートフォンが普及し、誰でも何処でも何時でも容易に写真や動画を
撮影し、インターネットに投稿できること、写真や動画がひとたびインターネット上で
公開されると、無制限・半永久的に拡散され、削除は極めて困難であるという事情があり、
被害者の被害は極めて甚大なものとなります。

このような行為は、事案の内容によりますが、民事的には損害賠償請求の対象となり、
刑事的には脅迫罪、強要罪、わいせつ物公然陳列罪、名誉棄損罪、ストーカー規制法違反、
児童買春児童ポルノ禁止法違反等の対象となり、加害者は処罰されます。
さらに2014年11月、いわゆるリベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供被害防止法)
が成立し、直ちに施行されました。

この法律では、撮影対象者が第三者に見られることを認識したうえで撮影を許可した
写真・動画は対象になりませんが、それ以外の性的写真・動画については、
第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、インターネット等を通じて
不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列する行為は、すべて処罰対象です。
自らインターネットに公開等するだけでなく、インターネットに公開させる等の目的で
第三者に写真・動画を提供する行為も処罰対象です。
罰則は、最高で3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

報道によれば、本年3月、元交際相手の女性の裸の画像をツイッターに投稿したとして、
都内の男性がリベンジポルノ防止法容疑違反で逮捕されました。
男性は5枚の写真を投稿し、いずれも被害者の後ろ姿か顔が分からないよう加工して
ありましたが、そのあだ名等が添えられており、知人であれば特定できるものでした。
顔が明確に写っていない画像であっても、リベンジポルノとして処罰対象となるのです。

ただ、これらの法律ですべてのリベンジポルノに対処することは困難であり、
まして、その防止は困難です。
法律は万能ではなく、平気で他人を傷つけることができる人達が現実に存在する以上、
自分のプライバシーは自分で守らなければなりません。
何より大切なのは、裸を撮りたいと求められても、決して応じないこと、
撮らせないということです。
明確に断ること。断る理由を説明する必要はありません。
それでもしつこく撮影を迫ってくる場合には、その人との関係を見直すべきです。

なお、万一、あなたの画像がインターネット上で公開されてしまった場合には、
プロバイダー等を通じて削除要請をすることができるので、とにかく一刻も早く
弁護士または警察に相談してください。

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障害年金という選択
弁護士 分 部 り か

 
弁護士の多くは個人事業主であり、私も国民年金保険料を支払っています。
日本の年金システムは3階建になっており、1階は国民年金、2階は厚生年金
(公務員は共済年金)、3階は私的年金となります。

私が弁護士として扱う事件では、離婚事件が多く、年金とのかかわりの多くは離婚時の
年金分割という制度です。
離婚時の年金分割は、日本のシステムでは2階の厚生年金に当たる部分に適用されます。
年金というと、少なくとも65歳になるまでは縁がないものと思いがちですが、
年金制度には、老齢年金の他に遺族年金と意外によく知られていないものに
障害年金という制度があります。

障害年金とは、障害によって稼働能力が低下し又は喪失した方に対し、その生活を
保障するために支給される給付です。
日本の障害年金は、身体の機能を一部ではなく全体としてみると稼働することが
できる場合であっても、障害年金が支給されることがあります。
すなわちフルタイムで就労していても障害年金が給付されることがあるということです。
またあまり知られていないことのようですが、精神疾患、発達障害、ガンでも、
「障害によって稼働能力が低下し又は喪失した」といえれば受給可能です。

その受給要件は次の通りです。
@原則国民年金または厚生年金に加入している間に(保険加入年齢より前にけがや
 病気が発生することがあるので原則となります)。
A障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受け、その障害が、
 障害認定日において、法令により定められた障害の状態にあること。
Bその病気やけがの初診日の前日まで一定の保険料が支払われていること
 (細かく規定されています)。
障害年金受給のために、現在の収入状況を明らかにしたり、行政が扶養してくれそうな
家族に扶養できるかどうかを確認することはしません(もっとも生活保護との
関係では障害年金は収入とみなされます)。

日本の社会保障は、申請主義を取っており、障害年金も申請しなければ、
自動的に受給できるものではありません。
また、さかのぼって受給することができるのですが、時効による請求権の消滅も
あります(5年経過で時効)。
障害年金受給のためには、一定期間の保険料の納付が必要です。
その期間には保険料の免除・猶予期間も含まれます。
すでに未納が生じてしまっていても、要件を満たせば2年までさかのぼって
免除・猶予が可能です。
さかのぼって免除や猶予の申請もしていないと、障害年金受給の要件を充たさないと
いうことになりかねないので気を付けなければなりません。

申請は書類を年金事務所に提出すればよいので、ご自身で手続きは可能です。
もっとも弁護士は代理人として申請のお手伝いをすることができます。
また障害年金の申請が却下されたり、障害の等級に不服があったりした場合
(等級によって受給額は異なります)の、審査請求、再審査請求を弁護士は代理人として
お手伝いできます。
さらに不服申立が認められなかった場合の裁判手続(行政訴訟)の代理人に
なることができます。

いろいろなご事情で、稼働能力を失っておられる方はたくさんおられると思いますが、
障害年金という選択まで思いもつかない方がたくさんいるといわれています。
ご自身が障害年金受給の要件に当てはまりそうであれば、一度是非当事務所に
相談にお越しください。

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