事務所だより
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2017年8月 暑中お見舞い申し上げます。
2017.08.01
暑中お見舞い申し上げます。
2017年8月

弁護士 大 脇 美 保
弁護士 喜久山 大 貴
弁護士 久 米 弘 子
弁護士 塩 見 卓 也
弁護士 中 島    晃
弁護士 中 村 和 雄
弁護士 諸 富    健
弁護士 吉 田 容 子
弁護士 分 部 り か
事務局一同



朝ドラみてますか?(その2)
弁護士 大脇 美保


 この4月からNHK朝の連続ドラマ「ひよっこ」が始まり、録画して毎日みています。昭和40年代のヒロインが茨城から東京に出てきて働きながら…という内容です。非常におもしろく時に涙してしまうのですが、違和感がある部分もあります。
大河ドラマは今年は戦国時代ですが、来年は、東京オリンピック時代までの物語だということですね。このように続くと、どうしても、「あの時代みたいに、文句いわずに一生懸命働きなさい」と言われている気がするのですが、みなさんはどうですか。
私が司法修習生になったのは30年前で、このころに労働災害の過労死の認定基準が初めてできました。弁護士になってからも、過労死の事件、働いて体を壊す方の事件も担当させていただいており、離婚事件の依頼者の方々も、パート・派遣、ダブルワークなどで大変な思いをして仕事をしていると日々痛感します。過労死の集会で、過労死した方のお子さん(確か当時20歳くらい)から「働くのが怖いです」という発言を聞いたこともあります。「ひよっこ」では、時代設定もあると思いますが、働くことの影の部分がほとんど出ていない点が違和感の原因なのかな、と考えたりします。
そして何より、安倍首相の「働き方改革」が、中途半端なまやかしであることが、本当に許せません。
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「差別などの人権侵害に関する特設法律相談」事業が始まります
弁護士 喜久山 大貴


 ヘイトスピーチ解消法の施行(2016年6月3日)から1年が経ちました。
京都府では、同法が地方自治体に求めている差別解消の体制整備等のため、京都弁護士会と提携して「差別などの人権侵害に関する特設法律相談」事業を、全国に先駆けて2017年7月から開始することになりました。この事業は、人種差別や部落差別、性的少数者に対する差別などの人権侵害を解消するための支援として無料法律相談を実施するというものです。
右翼のヘイト街宣といえば、象徴的な事件として2009年12月からの在特会らによる京都朝鮮第一初級学校襲撃が記憶に新しいです。この事件に対する取り組みを契機に、京都から全国に広がってヘイトスピーチ対策を通じた議論が巻き起こり、あるべき共生社会の姿や福祉国家の実現に至るための問題状況が共有され始めたようにも思いますが、私の実感としては、まだまだ半歩踏み出したかどうかというところでしょうか。
近年、法務省は「ヘイトスピーチ、許さない。」というキャンペーンを張って醜悪な差別街宣を阻止するための啓発活動を行なっていますが、あからさまな植民地支配が終焉を迎えた現代においても、在日外国人に対する法制度上の排除や抑圧を支えてきたのは、法務省による入国管理政策に他なりません。アイヌ・沖縄に対する攻撃も政府が主導しています。そういった意味では、誰を「国民」と認め、どのような働き方、暮らし方、家庭のあり方を「正常」とみなすかという国家イデオロギーとの闘いこそが差別のない共生社会に向けた運動となるはずです。
しかし、未だに人種やジェンダー、階級における差別の問題が、近代的な社会システムの単なる機能不全としてのみ分析されがちであって、日本社会に歴史的に織り込まれてきた植民地主義や帝国主義を正面から直視できていないというのが現状ではないでしょうか。
私は「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」の活動に関わりながら、就学支援金制度(いわゆる高校無償化)からの除外、全国の自治体での補助金停止の動き、日本政府による朝鮮学校弾圧の歴史と、学校関係者の民族教育に懸ける思いに向き合い、在日コリアンが晒されている今日的な差別被害の実態と構造について、改めて可視化すべきであると再認識しています。
始まったばかりの京都府による「差別などの人権侵害に関する特設法律相談」事業の行く末は全く分かりませんが、持ち込まれる法律相談の内容は、その人のアイデンティティに関わる歴史のみならず、政治的・制度的な背景や、社会構造における非対称性についての理解(の姿勢)が前提となることは避けられません。この事業が共生社会の実現に向けた実効的な機能を果たしていくためには、弁護士が自らの立場性に向き合って、真摯に学んでいかねばならないことがたくさんあるでしょう。私も微力ながら責任を果たしていきたいと思います。
のこととして、行ったり来たりしながら、ぼちぼち頑張っていきたいです。
 
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私の弁護士50年
弁護士 久米 弘子


 ◆ 私は今年、弁護士登録をして50年になりました。
5月には、日本弁護士会連合会が、表彰式と祝賀会をして下さり、私も参加してきました。司法修習の同期500名のうち、約350名が弁護士登録をしました。今年在職50年を迎えたのは全国で193名、内100名が表彰式に参加しました。弁護士には定年がありませんので、年をとっても元気で仕事をしている人が多いということでしょうか。
私は当初、大阪弁護士会に登録しましたが、5年位で生まれ育った京都に登録換えをし、今に至っています。京都弁護士会は、私が入会当時、会員数が200名足らず、内女性は4名だけでした。今や、会員数は約750名、女性も100名をとうに超えています。
◆ 私の弁護士50年のはじまりは、日本が戦後の貧しい時代(それがまさに私の子ども時代でした)を脱し、経済的に大きく発展するとともに、それに伴うさまざまな矛盾も増えてきた頃でした(私が司法試験に合格したのは、東海道新幹線が開通し、東京オリンピックが開催された1964年でした。朝ドラの主人公が高校を卒業して集団就職した頃と重なります)。
バブルの頃には、高騰する不動産売買でもうける人がいる一方で、「地上げ屋」がはびこり、乱暴なやり方で無理やり立ち退きを迫られる借家借地人の被害が続出しました。また、バブル崩壊後は、多額の借金を返済できずに倒産・破産が相次ぎました。高利のサラ金、ヤミ金との対応や次々におこる新手の消費者被害にも悩まされました。職場では、女性の就職、賃金差別はもちろん、結婚や出産は退職が当たり前でした。夫婦の問題でも「夫が妻を殴るのは当たり前」「夫婦ゲンカで110番するな」と言われるなど、夫からの暴力はほとんど問題にされませんでした。
何とか救う手だてはないのか。私たちは、従来の理不尽な扱いから被害者を救済するために、法律解釈の変更や新しい制度をつくることなどを求めて活動してきました。今では、新しい法律や制度ができ、ずい分助かっています。しかし、又々、新しい課題がいっぱい増えていますね。
◆ 私は、学生の頃はどちらかというと無口で人とのつき合いも不得手な方でした(!?)。しかし、弁護士の仕事は、何といっても人との出会いです。たくさんの依頼者の方々と出会い、一緒にとりくんで、無事解決したときは、共に喜び合いました(仕事柄、良い解決ばかりとはいえませんが)。いつの間にか人付き合いももよい方になっています。
今でも、20年前、30年前の依頼者が電話をかけてきて下さいます。ありがたいことです。
◆ 私は幸いにも、健康な方ですので、皆様に励まされ、事務所の若い弁護士の力を借りながら、もうしばらくは元気に仕事を続けられたらと思っています。
そのためにも、この日本がこれからも平和で戦争のない国であってほしい、そして、弁護士の活動の基本でもある「社会正義と基本的人権」がきちんと守られる国であってほしいと願っています。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
 
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「裁量労働制」の問題点
弁護士 塩見 卓也


 会社が従業員に定時よりも長時間働かせた場合、残業代を支払わなければならないことについては、皆さんもご存知と思います。しかし、労働基準法には、例外として、専門性の高い業務で働く従業員について、仕事の進め方や時間配分などの大部分が本人の裁量に任されているような場合に、労使協定を作り労基署に届出れば、「みなし時間」以上の残業代は払わなくてよいという、「裁量労働制」というものが規定されています。数年前から、この裁量労働制の適用対象を拡げる、つまりは残業代を払わなくてもいい働き方を拡げる内容の法案が、国会で審議中です。
裁量労働制は一見、本人の裁量の幅が大きく、いい働き方のようにも見えます。しかし、「どれだけの量の仕事をやれと命じるか」は会社側が決めることなので、適用されると長時間労働になってしまう傾向が強いというのが統計上の実態です。
今年の4月27日、私が労働者側代理人を務める事件にて、京都地裁で、形式上は裁量労働制を採用していても、手続的にも実体的にも不備があり、従業員が長時間労働を強いられていた案件で、裁量労働制の適用を認めず、労働基準法の原則どおりの計算での残業代請求を、ほぼ満額認める判決をもらいました。
裁量労働制は、残業代を払いたくない事業者に濫用されやすい制度です。皆さんも、自分や周りが裁量労働制の名の下に不払い残業を強いられていないか振り返っていただき、さらに国会で継続審議中の裁量労働制適用対象拡大法案についても、反対の声を上げていただきたいと思います。

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「忖度」とマフィア政治
弁護士 中島  晃


 今年の流行語大賞は、「忖度」(そんたく)で決まりだろうと言われているが、いやいや「モリ」も「カケ」もあるぞ、という声もあがっている。
いうまでもなく、「森友学園」と「加計学園」をめぐる問題でいわれていることである。
一国の首相や首相夫人と親しかった人物が経営する学園に、国有地が信じられないような超格安の価格で払い下げられたり、これまで認められてこなかった学部の新設が、「特区」指定により、急転直下で設置認可に向けて動き出すといったことがおこっている。
何故こうなったのか、資料公開を求めると資料は廃棄されて存在しないと言いはり、新しく資料が見つかると、怪文書だといって攻撃し、官邸からの指示があったと内部告発があると、確認できないといって言い逃れをする。そのうえ、少しでも逆らう人間がいると、マスコミに情報を流して、口汚く個人攻撃まで行う。
しまいには、担当者が勝手にやったことだといって、部下に責任を押しつける一方で、検察を動かして、トカゲのしっぽ切りまで行う。
国の政治が、首相のお友達や仲間の利益をはかるために動かされるようなことは、あってはならないことだろう。しかし、現実におこっている事態を見ると、非常にあくどいやり方がまかり通っており、まさしく「マフィア政治」ではないかとの指摘もなされている。
こうした状況を改めるために、いま私たちが一人でも多く、批判の声を上げることが何よりも求められていると考える。
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「国家戦略特区」てなんなの?
弁護士 中村 和雄


 森友学園問題につづき加計学園問題が安倍政権を揺るがしています。行政のえこひいきをを行い、それが明るみに出ると「黒を白」と言いくるめて必死に隠そうとする。あまりにも腐敗した政権であることを露わにしています。
ところで、加計学園だけが優遇されたのは、獣医学部の新設が「国家戦略特区」として認められたからです。「国家戦略特区」とは一体何者なのでしょうか。
首相官邸ホームページによれば、「国家戦略特区は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、2015年度までの期間を集中取組期間とし、いわゆる岩盤規制全般について突破口を開いていくものです。」とあります。そして、第3次の指定として。2016年1月29日愛媛県今治市が選定されているのです。
この国家戦略特区というのは、本来規制がかかっているものをその地域の特定の活動について規制を外すことを意味しています。国の最低基準の規制を外す特例を認めるということです。行政の公平性からも問題があるものです。安倍政権は、こうした不公平な施策を使って、自分のお友達を優遇していたのです。徹底した真相解明を求めていきましょう。


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共謀罪(テロ等準備罪)は廃止しかありません!
弁護士 諸富  健


 6月15日の朝、共謀罪(テロ等準備罪)法案は、委員会採決を省略するという極めて異例な形で参議院で強行採決されました。中間報告を出して委員会採決を省略するというやり方は国会法の規定に基づくものですが、非常に厳格な要件が定められた例外中の例外であり、今回その要件を満たしているとは到底言えません。
もちろん、内容もひどいものです。テロ対策と言いながら、そのために批准が必要だとする国連越境組織犯罪防止条約(パレルモ条約)は経済犯罪を目的とした条約ですし、今回の法案の対象犯罪は277も上り、テロの実行と直接関係ない犯罪が半数以上を占めます。キノコ狩りまで対象犯罪となることが国会審議で明らかになりました。一般人は対象にならないと繰り返し強弁されましたが、組織的犯罪集団との境界は最後まであいまいなまま。結局は、捜査機関が組織的犯罪集団と決めつければ、その時点で捜査の対象になるのです。準備行為があってはじめて処罰するから3度廃案になったこれまでの共謀罪法案とは違うという説明もなされましたが、ATMでお金をおろすなど日常の行為が準備行為に当たりうるので、共謀罪の本質は何ら変わりません。検挙するためには盗聴や盗撮などあらゆる捜査手法が必要となり、監視社会をもたらします。だからこそ、国連特別報告者もプライバシーに関する権利や表現の自由が制限されうると懸念を示したのです。
ここで萎縮すれば権力の思うつぼ。共謀罪廃止の声を挙げ続けましょう!

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「家庭教育支援法」とは?
弁護士 吉田 容子


 自民党は「家庭教育支援法」の成立を目指している。国が基本方針を定め、地方自治体や学校、保育所、地域住民などが連携し、家庭教育を支援する体制を整備することを目的としているが、特に注目すべきは2条の「基本理念」である。
2条1項は、家庭教育は「父母その他の保護者の第一義的責任」とし、「(保護者は)子に生活に必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」ものと定める。
また、2条2項の原案は「家庭教育は…子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」ことを明記していた。国家・社会に奉仕する子を育てることが家庭教育のあるべき姿であり、保護者の責務ということだ。この狙いが余りに露骨であったため、修正案では削除されたが、同時に原案にはあった「家庭教育の自主性を尊重しつつ」も削除された。
多様性を否定し、保護者の責任のもとに「国家に奉仕」する子を育てさせようとする狙いが明白であり、教育勅語と同類である。
自民党は様々な悪法を成立させているが、悪法を実効あらしめるのは、「根本において教育の力」である(思考をコントロールするのが最も効率的)。そのため、2006年に教育基本法を大改悪し、「教育の目標」に「公共の精神を尊び‥伝統を継承し」「公共の精神に基づき‥」「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する‥」などを付加し、家庭教育に関する10条も新設した。その延長に「家庭教育支援法」はある。
行きつく先は憲法改悪である。一見もっともらしい言い回しに騙されてはならない。

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後見制度の利用促進に向けて
 
弁護士 分部 りか


 ご自宅にお住まいの方の、後見人等として、財産管理、身上監護の援助をさせていただいたりすることが増えています。ご自宅で、生活をされているので、私が、口座からお金をおろして現金を定期的にお渡ししています。食費はその中から支払いをされていますが、その他の支払いは私が一手に担います。
在宅のまま、介護サービスを受け始めると、驚くほどたくさんの介護サービス提供事業所とかかわります。毎日違う事業所から介護サービスの提供を受けることもあります。その費用の支払いは、一度引き落としにすれば、支払いに煩わされることはないのですが、高齢になると、銀行の届出印がどれだかわからなくなったりして、支払いがしっちゃかめっちゃかになります。また介護や医療サービスは、届出をすることで減額を受けられたりすることもありますが、届出をご自身でできないということもあります。
こういったご本人の能力が低下した際に利用できるのが後見制度ではありますが、必ずしも後見制度に繋がっていないのが実情です。
地方自治体は、このようなニーズにこたえるため、一般市民を後見人候補者として養成して、後見人に就任してもらうことを検討し始めて、実際に市民後見人が誕生しています。また身寄りのない方の申立てについては、市町村長が申立人となって後見制度の申立てができることになっていますが、申立に至るまで時間がかかることは福祉関係者の中では周知のこととなっています。後見制度が、本人さんの能力にあった利用しやすい制度になるよう弁護士としていろいろ考えていかなければならないと痛感しています。


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