事務所だより
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2022年1月 迎春
2022.01.01
迎春
2022年1月


弁護士 大 脇 美 保 : 今こそ選択的夫婦別姓の導入を。
弁護士 喜久山 大 貴 : 再度の執行猶予判決等のご紹介
弁護士 久 米 弘 子 : 2022年を迎えて思うこと
弁護士 塩 見 卓 也 : 「連帯責任」的懲戒処分は違法 〜みよし広域連合(懲戒処分)事件
弁護士 中 島    晃 : 学術会議問題の背後にひそむもの
弁護士 中 村 和 雄 : 高齢者の就労について
弁護士 諸 富    健 : 真に外国人の人権が保障される入管法改正を
弁護士 吉 田 容 子 : NWECは面白い
弁護士 分 部 り か : プラスチックごみを減らすために 
事務局一同




プラスチックごみを減らすために 
弁護士 分部 りか


 これまでのニュースレターでは「ジェンダー」「高齢者支援」「環境」の3つのトピックスの中からそのときに思う題材で書いています。「環境」といえば、過去に、電気自由化のパワーシフト、所内のペットボトル問題を取り上げました。2022年冬は「環境」を選んで、弁護士会のプラスチックごみ削減プロジェクトチームのメンバーとして、または自分の生活の中で、プラスチックごみを減らす取り組みを皆さんにご紹介したいと思います。
1 事務所でのウォータースタンドの導入
 京都弁護士会館への導入と同時に当事務所にも2020年9月から導入しています。水道直結型のスタンドで、冷水・お湯・常温水が瞬間給水できます(お湯は3つの温度)。おかげで所内飲料として購入していたペットボトルを購入する必要もなくなり、ついでに事務所内のポット問題(お湯を切らせないようにする等)もなくなりました。浄水なので、作るコーヒーもおいしいです。出歩くときは、マイボトルに給水して出かけています。ご関心ある方はhttps://waterstand.jp/waterstand/もっとも新型コロナウイルス感染対策でいろんな会議がオンラインになり、そもそもドリンクを持ち歩く機会は減りましたが、所内で浄水を楽しんでいます。
2 トートバック型コンポスト
 以前、ベランダで大きなふた付きごみ箱を利用して生ごみコンポストを試みたことがあります。ウジがわき、虫が大量に発生して気持ち悪くて続けられなかったという苦い経験があります。2021年の夏、トートバック型コンポストについての新聞記事を読み、早速購入。夏に始めたので、ウジが大量に発生しました。以前であれば、ここであきらめたわけですが、そのウジは、アメリカミズアブの幼虫で、生ごみを適切に分解してくれる頼もしい味方だとか。最初は見るのも気持ち悪かったのですが、「アブちゃん」と思えば、すっかりかわいく思えるようになって、気にならなくなりました。茶殻、麦茶殻、アボカドの種も。なんでもかんでもいれたら、燃えるごみに入れるごみの量が減り、燃えるごみを出すのは週に1回になりました。生ごみのにおいを防ぐためにプラスチック袋が必要でしたが、生ごみはすべてコンポストに投入するので、生ごみのためのプラスチック袋も不要となりました。ご関心ある方は、https://lfc-compost.jp/
3 鴨川のごみ拾い
 プラスチックごみは、海に流れ、マイクロプラスチックとなり、海洋生物が摂取して、私たちの体内にまで入ってきます。ごみは川から海へ流れ着きます。弁護士会のプラスチックごみ削減プロジェクトチームでは2021年、身近な鴨川でごみ拾いを始めました。一見、ごみが見つからないのですが、川べりまで降りてごみ拾いをはじめると、たくさんあります。流れてぼろぼろになったレジ袋からペットボトル等。1時間ほどであっという間に袋がいっぱいになります。1ヶ月に1回くらいのペースで行っていますが、毎回たくさんあります。最近は普通に歩いていても落ちているごみが気になりだしています。
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再度の執行猶予判決等のご紹介
弁護士 喜久山大貴


 刑事裁判で一度は執行猶予の判決となったのに、その期間中にさらに再犯をおかしてしまった場合、原則として前回の執行猶予が取り消されるだけでなく、今回の罪について実刑判決を受けることになる。極めて例外的に「情状に特に酌量すべきものがある」(刑法25条2項)ときに限り、再度の執行猶予となる。
 私が2021年1月に国選弁護人として担当した20代女性のAさんは万引きを繰り返してしまう窃盗症(クレプトマニア)という病気だった。
 Aさんは、2020年6月に万引きで執行猶予判決を受けたばかりで、再びコンビニで食品を大量に万引きして逮捕された。過食と自己誘発嘔吐を繰り返す摂食障害や抑うつ症状、解離性健忘などを患っており、それゆえに万引きの衝動が抑えられないという事情を抱えていた。
 すぐに精神科で投薬治療を開始し、根気よく通院を続け、家族の協力を受け、摂食障害は寛解に至った。
2021年8月、Aさんの強い更生意欲と治療効果が上がっていること等を理由として、再度の執行猶予判決を獲得し、確定した。
一人で弁護人を務めた殺人事件の裁判員裁判や年明けの第16回公判期日で最終弁論を予定している青井硝子裁判、それ以外にも無罪となるべき大変な刑事裁判をいくつも担当している。
 日本の刑事司法には多くの課題があり、なかなか成果を上げにくいという現実がある。何度も悔しい思いを重ねてきたが、Aさんの事件に続けるよう今後とも頑張っていきたい。
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学術会議問題の背後にひそむもの
弁護士 中島  晃


 日本弁護士連合会は、菅前首相による日本学術会議会員の任命拒否に対し、さき頃、岸田首相に違法状態の是正と再発防止を求める意見書を提出しました。
意見書では、任命拒否は日本学術会議法に違反し、憲法23条の「学問の自由」を脅かすものと指摘しています。
 菅前首相が違法な任命拒否を強行したのは、杉田内閣官房副長官(当時)が学術会議が推薦した6人の学者を任命リストから除外したことにあるといわれています。この問題で、内閣官房が重要な役割をはたしていることがうかび上がりました。
ところで、最近のテレビドラマで注目されるのは、この内閣官房の犯罪が重要なテーマとなっていることです。6チャンネルの「相棒20」では、3話連続の「復活」で内閣官房長官の犯罪が特命係によってあばかれます。8チャンネルの「アバランチ」では、官房副長官によるテロを装った謀略があぶり出されます。ここでは、内閣情報調査室による非合法な情報操作がエスカレートし、口封じのため殺人まで犯すという権力の暴走がテーマになっています。
 こうしたドラマが、リアリティーをもっているのは、安倍・菅政権のもとで内閣官房が権力を濫用して、違法行為を繰り返してきたことが背景にあります。
こうした内閣官房の権力濫用が学術会議会員の任命拒否となってあらわれたのではないでしょうか。
 そうすると、安倍・菅内閣の退陣で問題が終わったわけではなく、その根底にある肥大化した内閣官房の権力濫用を問いただす必要があると考えます。
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2022年を迎えて思うこと
弁護士 久米 弘子


 新型コロナ禍の下で、これまでに経験したことのない不自由な生活が2年間も続きました。皆様にはお変りなく新年をお迎えになられましたでしょうか。当事務所は、幸い、所員一同に心配はありませんでした。今年こそは、(第6波感染拡大の不安もありますが)新型コロナ禍が収束し、平穏で普通の生活を取り戻せることを待ち望んでいます。

 この2年間は、人と直接会って話をしたり、交流したりする機会が大幅に減りました。会合や集会はほぼ中止、その後、パソコンや携帯電話を使用しての参加という企画が増えました。親しい友人知人たちとも、会って話をする機会が本当に少くなり淋しい限りでした。
 仕事の関係でも、当初は裁判期日が一斉に延期されました。再開後は、裁判所へ出向いて裁判官と直接対面して手続を進めるのではなく、それぞれが事務所にいて、電話会議やパソコンの画面を見ながらやりとりするリモート会議が多くなっています。
又、これを機会に、裁判のIT化が急速にすすめられようともしています。これは便利な反面、憲法で保障された国民の裁判を受ける権利や裁判の公開という点で注意すべき問題があります。皆様にもぜひ関心を持っていただくようお願いします。

 私は1歳の頃に、当時、京都で流行していた疫痢(赤痢)に感染し、京都府立医大附属病院の隔離病棟に入院したことがあります。同時期に入院した男児が亡くなり、「次はウチの子か」と親は覚悟したそうですが、幸いにも命をとりとめました。その後も虚弱児で、小学校入学時には余りにも体重が軽いので、担任の先生が心配された、とのちに聞きました。
 当時は、戦後の食糧難で、子どもの飢えを救うために小学校で給食がはじまったばかりでした(新型コロナ禍の今日、給食の役割が再認識されていますね)。
私も次第に健康となり、小学校5年生以降は中学・高校を通じて、病気のために学校を休むということはなくなりました。
 その後、現在まで、ほとんど病気知らずでした。生命保険の担当者からは「そういう方のおかげで生命保険の制度が成り立っています」と感謝されたくらいです。
ただ、昨年は、少々体調不良が続きました。病院嫌いの私ですが、今回ばかりは真剣に治療に励みましたので、幸い半年くらいで軽快しています。
 毎日のテレビ体操にも復帰しています。いつの間にか画面で演じる女性たちからレオタード姿がなくなり、2人が男性に交代していました。これもジェンダー平等への対応でしょうか。

 コロナ禍でも、世の中は動いているようです。私も、体調不良は貴重な経験の1つとして受けとめ、事務所の同僚弁護士や事務職員の協力を得て、できることは続けて行きたいと思っています。
本年もどうぞよろしくお願いします。
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高齢者の就労について
弁護士 中村 和雄


 近年、働く高齢者は数も割合も増えています。65歳以上の就業者数は906万人と17年連続で伸びています。15歳以上の就業者数に占める65歳以上の割合は13.6%と過去最高です。注目すべきは高齢者の就業率です。2020年の高齢者の就業率は25.1%となり、9年連続の上昇です。男性が34.2%、女性が18%でした。米国が18%、英国10.5%、ドイツ7.4%、イタリア5%、フランス3.3%です。年金など社会保障制度の充実度の違いによるのでしょうか。さらに、日本で企業に雇用されて就業している高齢者の8割近くはパートやアルバイトなどの非正規雇用でした。また、各産業の就業者に占める高齢者の割合を見ると農業・林業が53%と半数を超えています。
 高齢になっても元気で働くことができることは喜ばしいことです。ただ、老後をゆったり暮らしたいのに年金が少なくて生活できず、やむなく非正規で劣悪な条件下で働かざるを得ないとすると、幸福とは言えないでしょう。高齢者福祉とともに、高齢者の働く環境の整備が必要です。また、農業・林業の未来が心配です。若者に魅力ある農業・林業への転換は、農業・林業従事者に任せるのではなく、国や自治体の重要な課題であることを確認しましょう。
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NWECは面白い
弁護士 吉田 容子


 NWEC(国立女性教育会館)をご存じでしょうか。性の平等や共同参画の推進のため、関心がある人々が課題を共有し、ともに解決策を探る研修機会を提供し、また地域・組織・分野を超えた交流学習と連携・協働によるネットワーク強化を目指した活動を行っています。
 昨年から世界を席巻している新型コロナウイルス感染症は、あらゆる国や地域で特に脆弱 な立場に置かれた人々に対する暴力や困難を露にしており、国連はこれを「陰のパンデミック」であると警告し、コロナ収束後の新しい社会を形成する際にジェンダー視点を中心に据えた取組みが必要であることを強調しています。
 そこでNWECは、2021年12月、ポストコロナに向けて、ジェンダーに基づく暴力を如何に根絶し、新しい社会を形成していくかをテーマに、海外の先進事例や経験を踏まえ、課題克服の方策や各自の取組みの可能性を考えるセミナーをオンラインで開催しました。各報告は示唆に富む内容でした。例えば、ロサンゼルスを拠点に活動するタイコミュニティー開発センターは、移民や人身取引被害者など脆弱な立場におかれたタイ人女性のエンパワーメントの活動をしていますが、そのような個人の救済・支援だけでなく、居場所としてのコミュニティーの形成、さらに地域社会との共同や社会変革も視野に置いた活動が必要との指摘はまったく同感ですし、実際にそのような活動をしているのはすごいことだと思いました。日本側の報告も面白いものでした。
 日頃の業務の中で、目の前の被害者の救済だけでは(もちろん大事なことですが)被害(加害)の繰り返しだと痛感しており、改めて刺激を受けた感があります(実は私も報告者の一人でした)。NWECは貴重な組織です。2022年以降も面白い企画があると思いますので、是非、一度、サイトを覗いてみて下さい。
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真に外国人の人権が保障される入管法改正を
弁護士 諸富  健


 昨年1月、入管法改正問題が議論されている中で、NHKのETV特集「エリザベス この世界に愛を」が放送されました。入管に収容されている外国人がいかに過酷な状況に置かれているかを可視化したもので、漠然とした知識しかなかった私は衝撃を受けました。
 そんな中、昨年3月には、名古屋入管に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが死亡したというニュースが飛び込んできました。8月には調査報告書が発表されましたが、極めて不十分な内容で、なぜ尊い命を救うことができなかったのか、十分解明されていません。また、監視カメラ映像が13日分あるにもかかわらず、わずか2時間に編集した上、遺族にしか開示せず代理人弁護士の同席すら認めないという対応に終始しました。収容施設では、15年間で17人もの方が亡くなっており、組織全体の問題があると言わざるを得ません。引き続き、徹底した真相究明が求められます。
 ウィシュマさんが死亡したことも一つの契機となり、入管法改正案は廃案となりました。もっとも、政府は今年の通常国会に入管法改正案を再提出することを目論んでいます。しかし、そもそも政府の改正案は、難民を誤って送還して生命の危険にさらすおそれがあるなど、外国人をさらに過酷な状況に追い込む多くの問題を孕んでいます。入管行政の問題点を追及してその解消に努めるとともに、真に外国人の人権が保障される入管法改正が必要です。
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今こそ選択的夫婦別姓の導入を
弁護士 大脇 美保


 みなさんは、選択的夫婦別姓についてどう思われていますか。「改正すべき」「どっちも選べるんなら、その方がいいんじゃない?」と思う人が、年々増えており、国の世論調査(平成29年)においては、「法律を改める必要はない」との回答は、29.3%となっています。
 2021年6月23日にこの問題について最高裁判所の判決がでて、現制度が合憲という結論にはなりましたが、4人の裁判官の反対意見では憲法24条1項および2項に違反するとされています。
 実は、私自身、夫婦別姓を維持するために、30年間事実婚です。よく、「(別姓だと)子どもがかわいそう」という意見もありますが、私の子ども2人は成人しており、特に困ったことはなかったです。
 いま、LGBTQ+の方々の人権問題も大きな課題となっており、あらゆる場面で「多様性」が課題となっており、いまこそ「選択的夫婦別姓」の導入が求められます。
さきの総選挙の際の最高裁裁判官の国民審査においては、2021年の最高裁裁判官の中で、夫婦別姓を認めない現在の民法に「合憲」と判断した裁判官4名に対し、罷免を求める率がいずれも優位に高くなりました。
 今回、日本弁護士会連合会では、選択的夫婦別姓を求める国会要請行動をすることになりましたので、京都弁護士会会長として参加予定です。
【憲法24条】
1項 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2項 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
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「連帯責任」的懲戒処分は違法 〜みよし広域連合(懲戒処分)事件
弁護士 塩見 卓也


 徳島県の地方公共団体であるみよし広域連合で消防長として勤務していた方が、病気で2か月休んでいた間に、部下が飲酒同乗した車がひき逃げ死亡事件を起こした件との関連で、監督不十分との理由で戒告の懲戒処分を受けたという事案で、2021年9月15日徳島地裁にて、懲戒処分を取り消す勝利判決を得ました。
 判決は、@部下が事件を起こした当時は病休中で、監督権限のある立場になかった、A病休前は、定期的に部下に対し飲酒態度についての訓示を行うなど、消防長として通常行うべき監督義務は果たしていた、B事件前の時期における当該部下の勤務態度に特段の問題はなく、特別に注意・指導を行わなければならなかったといえるような事情もないとして、原告に職務上の義務違反はないと認定しました。
 昨今、部下が不祥事を起こすと、上司に具体的な職務上の義務違反が認められないにもかかわらず、「部下と連帯責任」的な処分が行われる事案があるようですが、この判決は、職務上の義務違反といえるような事実が具体的に認められないなら、懲戒事由に該当するといえる事実もないので、懲戒することはできないという、当たり前の考え方を改めて明らかにした点で価値があり、今後安易な懲戒の歯止めになるのではないかと思います。みよし広域連合は控訴してきましたが、控訴審でもこの結論を維持できるよう頑張りたいと思います。
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