事務所だより
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2026年1月 迎春
2026.01.01
迎春
2026年1月


弁護士 今 西 恵 梨 : 能登半島地震被災地の視察・支援旅行
弁護士 大 脇 美 保 : 更年期障害について
弁護士 喜久山 大 貴 :
弁護士 久 米 弘 子 : 健康を大切に
弁護士 塩 見 卓 也 : 「何度目だ」と言いたくなる労働時間法制改悪の動き
弁護士 中 島   晃 : 高市発言の危険性―治安維持法の悪夢をよみがえらせてはならない
弁護士 中 村 和 雄 : クマによる人身被害大量発生の報道に思う
弁護士 諸 富   健 : 「死の商人」国家への策動
弁護士 吉 田 容 子 : 需要の根絶こそ最大の対策
弁護士 分 部 り か : 『The Good Doctor』に見る“Good Lawyer”とは 
事務局一同



『The Good Doctor』に見る
“Good Lawyer”とは
弁護士 分部 りか
 私は米国のドラマを見るのが趣味で、これまで法廷ドラマをいくつか紹介してきました。今回は趣向を変え、医療ドラマ『The Good Doctor』をご紹介します。主人公ショーン・マーフィーを演じるのは、映画『チャーリーとチョコレート工場』でジョニー・デップと共演した子役として知られるフレディ・ハイモアです。彼が繊細に演じる、自閉症スペクトラムとサヴァン症候群を併せ持つ研修医ショーンの姿は、「良い医者とは何か」そして「良い弁護士とは何か」を考えさせてくれる貴重な手がかりとなります。
 ショーンは、診断のために非常に繊細な観察をします。患者のわずかな兆候を見逃さない点は、彼の大きな強みです。そして、観察から抱いた疑問を患者にストレートに確認し、必要な情報をシンプルに聞き出していき、診断の精度を高めます。
 この姿勢は弁護士業務にも通じます。依頼者の言葉だけでなく、沈黙や表情の揺らぎなどの非言語的反応に気づくことで、問うべき点が浮かび上がります。そして簡潔に問い直すことで、より問題の本質の理解を高めます。ショーンの「観察を起点に必要な情報を質問で補う姿勢」は、弁護士にとっての事実把握にも通じるものがあります。
 医療では診断の正確性が治療を大きく左右します。診断を誤れば、治療の効果は出ません。弁護士の仕事も、事案の本質を誤解すると適切な解決に導くことはできません。依頼者の最大利益は、事案の理解の深さにかかっています。
 外科手術の場面では、“開けてみなければわからない”状況も描かれます。画像に映らない問題が手術中に明らかになり、手術を中断して閉じたうえで、患者の意思を再確認するシーンもあります。不確実性の中で、明確になったことへの患者の意思の再確認は、弁護士の実務にも重なります。相手方の主張や新事実によって予定どおりに進まないことがあり、そのたびに状況を整理し、依頼者に説明して方針を調整する必要があります。
 そしてこのドラマで欠かせない存在が、ショーンが勤務する病院の院長アーロン・グラスマン医師です。彼はショーンの才能に幼い頃から気づき、家族のように見守り続けてきました。ショーンが誤解され孤立しそうなときも、本質を理解し、揺るぎない信頼を寄せます。ときに厳しく、ときに温かく、医師として成長するための支えとなる存在です。弁護士の世界でも、良い指導者の存在は成長を大きく左右します。実務でしか学べない事柄は多く、経験豊富な先輩からの助言や支えが若手を一人前へと導きます。
 ショーンは駆け引きや行間を読むことが苦手ですが、「人を救いたい」という動機が驚くほど純粋です。必要な場面では強い意志をもって考えを述べ、患者のために最善を尽くします。名誉や報酬より患者を第一に考える姿勢は、専門職の原点を思い出させます。
 『The Good Doctor』は、ともすると「障害があっても専門職になれる」という励ましの物語ととらえられるかもしれませんが、タイトルが示すとおり、真に追求しているのは“良い医師とは何か”という普遍的なテーマです。その問いは、医療に限らずあらゆる専門職に向けられたメッセージでもあり、弁護士として、自身の職務の在り方を見つめ直すきっかけを与えてくれたドラマだと感じます。
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更年期障害について
弁護士 大脇 美保

 本年度の労働法学会で「労働者の健康とウエルビーングー女性の特性に着目してー」が取りあげられました(なお、私は労働法学会に所属していませんが、同業者の親族から教えてもらいました)。
 ここでいう「女性の特性」とは、月経困難症等と更年期障害です。月経については、「生理ちゃん」というマンガ(手塚治虫文化賞短編賞受賞、映画化もされています)が発行されるなど、オープンになりつつありますが、更年期障害については、「老化」や「中高年女性」などの個人情報と結びつきやすく、語ること自体が年齢の可視化となることから、心理的抵抗感が強く働く傾向にあるという指摘がされています。また、更年期障害の身体的・精神的症状は多様で不定期であり長期化する場合あることが特徴で、ほとんどなにも症状がない人から仕事を辞めざるをえない人までさまざまです。
 日本でも、2022年、「更年期症状・障害に関する意識調査」が厚労省で行われており、ここでは男性の更年期についても調査されています。
 更年期障害の方に対して、職場で「合理的配慮」が求められている国もあるとのことですが、日本の取り組みは、まだこれからと言えます。体調に対して十分な配慮がされて、すべての世代が働きやすく生活しやすい社会を目指していくべきだと考えています。
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能登半島地震被災地の視察・支援旅行
弁護士 今西 恵梨

 2025年10月所属する会派の能登半島地震の被災地の視察支援旅行に行ってきました。
 はや2年が経過しますが、復興には程遠い風景が忘れられません。震災前は漁師たちの住まいが立ち並んでいた鵜飼地区の更地、マンホールの隆起、輪島市の朝市一帯が火災による更地等々、未だに電柱が曲がったままのところも多く平衡感覚がまひするのではないかと感じました。
 そして、震災により能登半島の西側は隆起したため、地元住民の生活に根付いていた港も海が後退し、震災により生活が一変したとはまさにこのことだと感じました。
 能登半島へ向かう幹線道路の一つであるのと里山街道も現在は通れる状態ですが、まだ道は波打っているところもあります(某万博により、ゼネコンが一時撤退して道の修繕ができなかった期間もあったとのこと)。復興とは何なのか、非常に考えさせられました。
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「何度目だ」と言いたくなる労働時間法制改悪の動き
弁護士 塩見 卓也

 高市首相は、自民党新総裁に選出された後のあいさつで、「全員に馬車馬のように働いていただく。私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる」と発言しました。この言葉が、仮に単なる決意表明だったとしても、トップに立つ者の発言がいかに部下に影響するかを考えない、極めて不適切な発言だといえます。そして案の定、高市政権は、「働きたい改革」などと称し、残業時間上限規制の緩和や裁量労働制適用対象拡大などの法改悪を言い始めています。長時間労働が働く者の命と健康を危険にさらすことについては、もはや社会常識といえます。
 厚生労働省の調査では、調査に回答した労働者のうち、@「就業時間を増やしたい」人は全体の6.4%、Aこのうち約半分は労働時間が週35時間未満、年収200万円未満、B月間残業時間80時間超でも労働時間を増やしたい労働者は0.1%との結果が出ています。現在の残業時間上限規制での限界である80時間を超えて働きたいという人はほとんどおらず、労働時間を増やしたいという人の大部分は低賃金こそがその理由であることが分かります。つまりは、高市政権の目指す法改悪を行うべき理由は、労働者側にはありません。法改悪の目的は、財界側が労働者をこき使うことにこそあるといえます。
 裁量労働制の拡大などは、過去何度も浮上しては、反対運動で押し返してきた経過があります。労働時間法制の改悪を許さないよう、みなさんもこの問題を注視していただきたいと思います。

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健康を大切に
弁護士 久米 弘子

 昨年の秋はあまり良いことがありませんでした。
一つは、九月の終わりに、バスに乗り遅れまいと小走りになった際に、転倒して足を痛めたこと。左膝の出血したスリ傷は間もなく治りましたが、右足首の捻挫は二ヶ月も保護装具をつけて、靴が履けませんでした。
 もう一つは、夏の健康診断で指摘された大腸の再検査で、腫瘍が発見されて摘出したことです。完全麻酔のおかげで、手術は痛みどころか意識も全くありませんでした。結局、手術日の前後を含めて、二日半も入院することになりました。退院一週間後の診察で、担当医から「ポリープは摘出したので何も心配することはない」と言われて、ホッとしています。
 入院したのは、生まれて間もない頃の集団ハシカ(死亡の心配が強かったらしい)と、小学四年生時の盲腸炎(当時の手術は一週間入院が普通)、長女の出産時位です。あとはごく健康に平穏に過ごしてきたので、高齢になってからの入院は少し心配でした。なに事もなく退院した後は、ついつい、無理をしないようになっています。
 少し大ゲサに書きましたが、これは自戒のためです。
 皆様も、(丈夫な方ほど)元気なつもりで無理をしないよう、くれぐれもお気をつけ下さい。
 今年(私の当たり年です)、(又、何かと世の中が騒がしくなりそうな)年初めの感想です。
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クマによる人身被害大量発生の報道に思う
弁護士 中村 和雄

 昨年の秋から冬にかけて、全国各地でクマの襲撃による被害のニュースが、連日報道されました。キノコ狩りや登山の楽しみが奪われただけでなく、東北地方などでは住宅街をクマが徘徊し、学校や保育園への通学・通園も車での送り迎えだったり、自粛する騒ぎとなりました。
 私は、昨年11月に大分竹田市にある配偶者の実家でのゆず・かぼすの収穫に行ってきました。さいわい、今のところ九州には熊が出現しないので、安心して作業することができました。もっとも夏の帰省時には、庭でうり坊5頭が捕獲されました。今回はイノシシとは遭遇していないのですが、イタチが庭で遊んでおり、丸々と太った狸の夫妻とは入口付近で2度ほどお会いしました。近隣の農地はほぼ全部柵で覆われています。イノシシや鹿などの害獣対策です。
 地方にもたくさんの人が居住していた頃は、野山もきちんと管理されていて、里山と言われるところはきれいに整備されていました。今のように、多くの害獣が住宅地までやってくるようなことはありませんでした。
 気候変動と人口減少社会の中で、どのように地域の暮らしと経済と環境を守っていくのか、自治体職員をはじめ、地域の皆さんが試行錯誤を繰り返しています。しかしながら、柵を作ったり、薬を撒いたりなどの対処療法は根本的な解決には結びついていません。抜本的な解決は、地方の人口減少をくい止めることしかないように感じます。外国人移住者との共生も1つの方向性ですが、経済や税制の仕組みを大きく転換することも有効な政策だと考えます。
 都市部と地方の賃金格差が大きいことから、若者は就職先を都市部に求める傾向が顕著です。大企業の本社の多くも東京にあり、東京一極集中の構造がますます進んでいます。東京都には莫大な住民税や地方法人税が入ってくるために、充分な予算を使って都市機能の整備や住民の社会保障制度を拡充します。地方では、充分な財源がないために充分な社会保障制度の拡充ができず、住民が離れていきます。
 この悪循環を断ち切らねばなりません。全国一律最低賃金制度の確立や企業の法人課税の本社集中システムの改善、富裕税などの創設による税収増加分の地方交付税の配分増加など国の制度を改革していくことによって、地方の活性化を図ることは充分に可能です。今後の選挙において大きな争点になることを期待します。
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高市発言の危険性
―治安維持法の悪夢をよみがえらせてはならない
弁護士 中島  晃

 「戦争が廊下の奥に立っていた」は、戦争が自分の身近に迫ってきたことを鋭く突いた渡辺白泉の無季俳句であり、戦前の新興俳句の代表作となった。当時、日中戦争が始まっており、この句の背景には戦争への強い警戒感がある。白泉は、戦争や軍隊に懐疑的な作品を作ったことから、特高警察に狙われ、新興俳句運動のつながりで「京大俳句」事件に連座して、治安維持法によって検挙されている。特高警察が俳句などの文芸活動にまで弾圧を加えるなど、戦前から戦中にかけて、治安維持法は国民の自由と人権を抑圧する稀代の悪法として猛威をふるい、敗戦により1945年10月に廃止された。
 しかし、安保関連法の制定や日本学術会議委員の任命拒否など、いま日本は「新しい戦前」を迎えていると言われている。さき頃、参政党の憲法草案には「國體」という言葉が登場した。これは「國體変革」を禁圧した治安維持法の悪夢をよみがえらせるものである。
 しかも、誕生したばかりの高市早苗首相が国会で「台湾有事」をめぐって日本の存立危機事態になり得る、言いかえれば日本が「台湾有事」に参戦することを前提とした発言をしたことは、非常に危険きわまりないものである。そのうえ、非核三原則の見直しまで言われるようになった。日本は、いま「戦争前夜」を迎えようとしているといっても過言ではない。
 高市発言をきびしく批判し、戦争を許さない取り組みを強めることがいま求められている。
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需要の根絶こそ最大の対策
弁護士 吉田 容子

 昨年11月6日、朝日新聞は朝刊1面トップで、12歳のタイ人少女の人身取引事案を報じた。母親に連れられ6月下旬に来日した少女は、その直後から東京都内の「マッサージ店」で約60人の客に性的接客業務をさせられており、店長が逮捕されたという(続報も出ている)。
 人身取引とは、搾取の目的で、暴行脅迫欺罔誘惑や窮状に付け込むなど様々な手段を用いて、人を採用運搬移送蔵匿収受する行為であり、重大な犯罪である。日本でも遅くとも1980年代から存在し、2004年以降は政府も一応の対策を講じ、加害者の処罰や人々への啓発を行っている。しかし摘発される事案は一部であって、膨大な事案が潜在化している。
 約60人もの男性が平然と12歳の子供を性的搾取したということから、この件は大きなニュースとなり、他の新聞やNHK、TBS、朝日放送、毎日放送等でも次々と報じられた。以前から人身取引の根絶を目指すNGOの活動に参加していた私は、複数の報道機関から取材を受けたが、そこで強調したのは、@需要は人身取引の不可欠の構成要素であり(加害者が危険を冒して犯罪行為に手を染めるのは需要即ち利益があるから)、需要が続く限り人身取引はなくならず、需要者(例えば風俗店の客)は加害者であってその責任は大きい。A加害者(特に需要者)の多くは身近にいる「普通」の人であり、周囲の人は気付いたら止めることができる、傍観は加害行為を助長する、ということである。
 一度受けた被害の100%回復は難しい。一切の需要を根絶して被害を防止することが強く求められている。
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「死の商人」国家への策動
弁護士 諸富  健

 憲法違反の安保法制が成立してからちょうど10年目の2025年9月19日、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」が提言を発表しました。この提言は、抑止力・対処力の更なる強化が喫緊の課題であるとして更なる軍拡を促すほか、国営工廠の導入を含めた武器の国内生産体制強化、武器輸出の積極的推進を謳い、産官学の連携が重要であるとしてそのための環境整備を求めています。そして、このような防衛力強化と経済成長が好循環を作り出すとしています。同年10月20日、自民党と日本維新の会が連立政権合意書を取り交わしましたが、この提言を反映した内容が盛り込まれています。
 2012年12月に第2次安倍政権が誕生してから軍事費は一貫して右肩上がりで、2025年の補正予算で年間の軍事費関連予算が11兆円とGDP比2%を達成してしまいました。お題目のように「厳しい安全保障環境」を理由に挙げていますが、改善するどころかますます厳しくなっています。軍拡競争を招く「安全保障のジレンマ」に陥っているのではないでしょうか。その上、産官学共同で軍事強化を進め、他国への売り込みをかけています。まさに「死の商人」国家へと突き進んでいます。その恩恵を受けるのは、米国と一握りの巨大軍需企業です。
 「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」して、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を定めた日本国憲法の原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。
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