暑中お見舞い申し上げます。
2026年8月
弁護士 伊 藤 大 輔 : 入所のご挨拶弁護士 今 西 恵 梨 : とりとめのないつぶやき弁護士 大 脇 美 保 : 裁判や調停とオンライン弁護士 喜久山 大 貴 : Bialystocksについて弁護士 久 米 弘 子 : 弁護士60年を迎えて弁護士 塩 見 卓 也 : 滋賀県社会福祉協議会事件最高裁判決のその後弁護士 中 島 晃 : タワマン建設という愚行を許してはならない弁護士 中 村 和 雄 : ポケット憲法を普及しよう弁護士 諸 富 健 : 今年の憲人は平和とSNSがテーマです弁護士 吉 田 容 子 : 授業は大変弁護士 分 部 り か : 司法修習生の指導を担当して事務局一同
今年の憲人は平和とSNSがテーマです
弁護士 諸富 健
京都弁護士会は、毎年時宜に適ったテーマを選んで市民の皆さんに情報発信する最大のイベント「憲法と人権を考える集い」を開催しています。56回目を迎える今年の憲人のテーマは、平和とSNSです。
2013年に特定秘密保護法、2017年に共謀罪法が制定されましたが、昨年10月に連立政権合意書を締結した自民党と日本維新の会は、インテリジェンスの強化を謳って、市民監視の動きを強めています。今年に入って国家情報会議設置法が成立し、今後はスパイ防止基本法や外国代理人登録法、ロビー活動公開法等のスパイ防止関連法制の制定が目論まれており、軍事強化の動きと相俟って戦争に近づいている雰囲気が世の中全体に漂っています。
一方、SNSやAIの進展は目を見張るものがありますが、東京都知事選や兵庫県知事選、直近の国政選挙などから明らかなように、フィルターバブルやエコーチェンバーといったSNS特有の性質による影響が現実の政治にも大きく及ぶ事態になっています。高市首相による中傷動画が話題になっていますが、権力者がSNSを利用して「世論誘導」することで、「戦前回帰」への動きが加速する懸念も生じています。
こうした情勢を踏まえて、京都弁護士会としても市民の皆さんに警鐘を鳴らして共に考える機会を持ちたいという思いから、今回のテーマ選定となりました。
メイン講師は、マスメディアにもたびたび登場している評論家の荻上チキさん。荻上さんは、社会調査支援機構チキラボの所長として、様々な社会問題について調査分析して情報発信されているほか、選挙分析の著書を出版されるなど、客観的なデータに基づく明晰な見解に定評のある方です。
当日はパネルディスカッションも予定していますが、パネリストとして、荻上さんの他に、SNS・AIの問題を憲法学・情報学の立場から追究している慶應義塾大学准教授の水谷瑛嗣郎さん、戦前の報道を現代に甦らせた「京都戦時新聞」という企画に携わった京都新聞記者の上田真里奈さん、複数のメディアにレギュラー出演して人権擁護の立場から鋭いコメントを発している弁護士の三輪記子さんが登壇されます。いずれの方もメディアに精通しておられていますので、パネルディスカッションでどのような化学変化が起きるか今からとても楽しみですし、現在の不穏な動きに対して私たちがどのように対抗していくことができるかについて、示唆に富むコメントがたくさん得られるのではないかと期待しているところです。
今年の憲人は、11月29日(日)午後1時30分〜5時、立命館大学朱雀キャンパス大ホールで開催します。今後の日本の行く末を考える上でも有意義な時間になることは間違いありません。WEB併用で行いますので、多数の皆さまのご参加を心よりお待ちしています。
入所のご挨拶
弁護士 伊藤 大輔
この度、市民共同法律事務所に入所しました、伊藤大輔と申します。これまで東海地方で生活していましたが、京都の地で働くことになり、ご縁のありがたさを感じます。
たまに読み返す本に、ジョン・ロールズ著(田中成明ほか訳)『公正としての正義 再説』(岩波書店、2004)があります。
ロールズといえば、「無知のヴェール」という思考実験がよく知られています。これは、社会や法の仕組みを考える人が、自分の地位や境遇などを知らない立場に置かれたなら、どのような仕組みを選ぶだろうか、という問いです。ロールズは、そのような立場から選ばれる仕組みが、公正で正義に適っていると考えました。
私が思うのは、この無知のヴェールというのは、どこか逆説的で、自分の属性を何も知らない状況とは、自分の属性を自分に固有のものとして「全て知っている」状況と近いのではないか、ということです。自分と他者との違いを自覚して初めて、自分の属性を自分の固有のものとして、ヴェールの外に置くことができるのではないでしょうか。そうすると、無知のヴェールを被ることとは、自分と他者との違いに想像力を膨らませること、そしてその違いに敬意と寛容さを持って応じることに近いように感じます。
これからも一つひとつのご縁を大切に、想像力と寛容さを持って仕事をしたいと思います。まだまだ勉強中の身ですので、皆様のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
弁護士60年を迎えて
弁護士 久米 弘子
弁護士になって60年になります。当初は女性弁護士がまだとても少なかった頃、同期500名中女性は20名でした。
修習生の頃、京都弁護士会は、裁判所内の弁護士控室に同居していました。ダルマストーブを囲む先輩男性弁護士を伺いながら、そろっと暖たまりに行ったものでした。
最初の弁護士会館ができて、裁判所と弁護士会の2階が渡り廊下のようにつながっていたのは便利でした。
先輩弁護士の達筆の手書き書面がワープロになり、今や訴状も裁判所に提出に行かなくても画面から送ればよくなりました。
振り返ると、私は、世の中の激変を身をもって体験してきた世代の1人かと思います。
甘い食べ物に飢えていた子どもの頃、給食のミルクに助けられたのに、あれはアメリカの家畜の飼料用だったと知った時の複雑な気持。キャラメルや氷砂糖を大切にしていた遠足。まもなくやってきた電化製品の嵐。中でも母をよろこばせたのは洗濯機でした。冷たいタライの水での6人家族の洗濯。母の手はいつもヒビわれていました。洗濯機がきて母はようやく解放されたのです。
それからずい分時間がたちました。
時間が過ぎるのがどんどん早くなるように思うこの頃です。
弁護士2名と事務局2名でささやかに発足した当事務所も42年たち、今や、弁護士11名と事務局9名の大世帯です。今後とも、社会の役に立つ存在であり続けてほしい、と願っています。
タワマン建設という愚行を許してはならない
弁護士 中島 晃
いま、JR向日町駅東側に高さ約128m 38階建てのタワーマンションの建築計画が進行している。JR西日本不動産開発と三井不動産レジデンシャルによって建設されるものだが、完成すれば、京都府下で初めてのタワマンとなる。歴代の自民党政権が進めてきた新自由主義政策のもとで、大手不動産の都心改造促進のための規制緩和が推し進められ、東京、大阪などの大都市圏を中心にタワーマンションが次々と建設されてきた。このタワマン建設の波がいま京都にも押し寄せてきている。
タワマンについては、榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)が、大規模修繕や建替が困難なため、やがて巨大な廃墟となる危険があると指摘して、「分譲タワーマンションの建造は、日本人の犯している現在進行形の巨大な過ちである」と厳しく批判している。こうした中で、久元神戸市長は、神戸市の中心地、三宮周辺でのタワマン建設を規制する方針を打ち出している。
東京や大阪では、タワーマンションの建設が相次ぎ、その最上階が数億円から十億を超える高額で売り出され、それを富裕層が買いあさるという事態が進行している。しかし、それは、不動産価格の上昇を招き、低所得者や高齢者などを中心に立ち退きが余儀なくされるなど、地域コミュニティの崩壊を引き起こしている。
誰もが安心して住み続けられるまちづくりを目指す上で、タワマン建設という愚行は決して許してはならないことであると考える。
授業は大変
弁護士 吉田 容子
かれこれ30年近く大学等で授業をしてきた。法科大学院は長かったが、他はすべて非常勤で半期(半年)ごとを繰り返す。一度だけ債権法(民法)を担当したが、これは半期で勘弁してもらい、あとは専らジェンダー関係の科目。主として家族法、刑法、労働法の領域で、差別の実情、法制度、判例解説などをしてきた。
毎年「もうもうやめたい」と思いつつ、今も女子大の非常勤を続けている。これは、まだまだ差別が蔓延し、弱肉強食・格差拡大の傾向すらみられるこの社会の中で、彼女達が被害者にならないよう、知識を蓄え、思考力を高め、自ら選択した自由で自立した生活を送ることができるよう、強く願うからである。彼女達の受講態度は真面目であり、おそらく彼女達自身が危機感を抱いているからだと思われる。
しかしこれがなかなか大変。実習科目(法律相談)は普段の仕事の延長なので簡単だが、講義はそうはいかない(非常勤は専ら講義)。あらためて文献や判例を読み、レジュメを作成し(毎年、更新している)、少し緊張しながら学生に向き合う。これを15回繰り返す。レポート採点や成績評価もある。かなりの時間と労力を使う。特に毎回の講義準備は時間がかかる。
これらをあの給料(安い!)でやれと言われるのはマジにつらい。私は本業があるからまだよいが、多くの研究者が非常勤の掛け持ちを余儀なくされているのは公知の事実。日本社会は、この方たちの待遇を改善し、その意欲と才能を活かす方策を真剣に考える必要がある。
やはり授業は大変です。
ポケット憲法を普及しよう
弁護士 中村 和雄
「5.31ピースアクションin舞鶴」に参加してきました。私も所属する自由法曹団京都支部は、マイクロバスを借り切り、前日に米軍のXバンドレーダー基地を視察しました。翌日はトマホーク配備反対・ヒューマンチェーンに参加し、その後に開かれた集会にも参加してきました。とても暑い一日でしたが、全国から集まった2,800名の参加者の熱気もものすごく熱いものがありました。右翼の街宣車からの大音量での妨害行動にもひるまず、基地包囲のヒューマンチェーンがしっかり結ばれました。
そもそも舞鶴に配備されるというトマホークは、第一次トランプ政権が安倍首相に売りつけた大量のイージスアショアが発射後の破片が住宅街に落下する危険な欠陥品であったことから、代わりに購入することになったものです。攻撃される前に先制攻撃をすることも「自衛」の範囲だという、とんでもないへ理屈をつけて北京まで届くミサイルの配備をしようというのです。ますます、戦争の危険を高めるだけです。
いまこそ、憲法九条の意議をしっかりと確認することが重要です。「手のひらに憲法プロジェクト」(TEL 075(211)1161)では、現行の憲法と大日本帝国憲法、そして現行憲法制定当時に文部省が作成した「あたらしい憲法のはなし」を一冊にまとめた「ポケット憲法」を一冊 100円で頒布しています。皆さんのご協力をお願い致します。
司法修習生の指導を担当して
弁護士 分部 りか
昨年度は弁護士会の役職に就いていたため担当を外れていましたが、本年度から再び司法修習生の指導担当を務めています。今年で5年目です。
司法修習生とは、司法試験に合格し、裁判官・検察官・弁護士になるための実務研修を受ける人たちです。弁護士修習では約2か月間、担当弁護士に同行し、相談や打合せ、裁判期日など、日々の実務を間近で見ながら学びます。まさに担当弁護士と行動を共にし、一人前の法曹への第一歩を踏み出す期間です。
修習生の気質も時代とともに変わってきました。かつてのような体育会系の上下関係や、仕事終わりに連れ回すような文化はほとんど見られなくなり、アフター5は自分の時間を大切にする人が増えています。また、司法試験合格前から就職先が決まっている修習生も多く、京都での修習を少し気楽に考えているように感じることもあります。その一方で、熱心に学び、多くのことを吸収しようとする優秀な修習生も数多く、その姿勢には私自身も大いに励まされています。
司法修習は、多くの修習生にとって初めての本格的な社会経験でもあります。若さゆえの未熟さや配慮の足りなさが見られることもありますが、それも実務を通じて学び、成長していく過程です。趣旨をご理解いただき、修習生の相談や打合せ、事件期日への同席につきまして、ご協力を賜れますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
Bialystocksについて
弁護士 喜久山大貴
2019年に結成、2022年にメジャーデビューしたオルタナティブロックバンドBialystocksの楽曲はポップさの中にも複雑な展開を持つ曲構成が多く、爽やかなハイトーンボイスが特徴である。容易に口ずさむことはできないが1本の映画を観たときのような不思議な没入感を得ることができる。
キリン生茶のTVCMソング『差し色』や、ドラマ「きのう何食べた?season2」のEDテーマ『幸せのまわり道』、ドラマ「ラムネモンキー」の主題歌『Everyday』は、いずれも日常における生の実感や尊さを描いている。
ボーカルの甫木元空には映画監督や作家としての顔もあり、主な著書に『はだかのゆめ』(同名の映画作品も)、『その次の季節 高知県被曝者の肖像』があり、前野健太の反戦歌「戦争が夏でよかった」のMVなども手掛けた。
ビキニ環礁の米軍水爆実験では第五福竜丸以外にも1,400隻を超える日本の漁船が「死の灰」と呼ばれる放射性物質を浴びて被曝した。彼は高知県被曝者の証言、記憶を継承していくため漁師に聴き取り取材を行なっている。
彼の思想や表現活動に少なからぬ影響を与えていると考えられるのは、弁護士が呼びかけて全国で公演された「憲法ミュージカル」の脚本演出などを務めた亡父田中暢の存在であろう。
これまでのBialystocksの楽曲の中では、反戦や核廃絶といった直接的で政治的なメッセージは強調されていない。しかし、死や理不尽さと対置する形で、今ある日常の風景を描き出そうとしており、多く支持を集め始めている。
とりとめのないつぶやき
弁護士 今西 恵梨
私は、最近、JR西日本のサイト(おでかけネット)で便利な情報があることに気づきました。それは、列車のその時点における走行位置とともに、新快速等の列車(一部の列車のみです)によっては、車両の混雑状況も簡単にわかるようになっていることです。この情報をもとに、どの車両に乗ろうかと考えたりもして、非常に便利です。
JR西日本によれば、車両に搭載された「モニタ状態監視装置」から乗車率や車内温度などのデータが送信され、そのデータをもとにリアルタイムに情報提供されるようです。
混雑状況の情報提供は本当にリアルタイムです。どれだけ瞬時に情報が変わるのかを車両に乗りつつ、混雑状況を逐一確認していましたが、まさに瞬時に情報が変わっていました。
このシステムを初めて知った時には非常に便利な世の中になったと感じました。ですが一方で、この便利なシステムの恩恵を受けている身ではありますが、ネットの情報に頼ってしまう世の中になっているとも感じました。確かに、このシステムによって合理的に車両を選択でき、全体を見れば混雑状況が分散され、良いシステムなのだとは思います。ですが、人の流れを予想して、車両を選ぶという考える行為をする必要がなくなった、ということでもある気がします。このような細かなことですが、やはり最近は、自分の頭で考えずにネットの情報に頼ることが増えたとふと思ったのでした。
滋賀県社会福祉協議会事件最高裁判決のその後
弁護士 塩見 卓也
2024年4月26日、私が労働者側代理人を務める事件で、勤務先との労働契約に職種限定合意があると認められる場合に、仮に勤務先がその職種を廃止することを決めたなどの事情があったとしても、労働者本人の同意なく、職種の変更を伴う配置転換を行うことは違法である、との内容の最高裁判決をとったことについては、2024年夏季号のこのニュースでお伝えしていました。
この事件の関連では、最高裁判決が出た最初の事件の進行中、原告の方が元の職種での復職を求めたのに対し、配置転換命令後の職種に戻れないのであれば休職期間満了でクビにすると使用者側から通告されたため、退職無効を前提に労働契約上の地位の確認を求める訴訟を、別件で行っていました。この別件訴訟は、一審判決が先の最高裁判決を無意味にしてしまうような内容でこちらの請求を全部棄却としたため、控訴審に移行していました。
控訴審では、裁判官から一審判決を覆す内容の心証開示がありました。もっとも、控訴審係属中に原告の方は60歳になり、定年に達してしまいました。それらを踏まえ、この別件訴訟では、本年2月、原告の方が定年まで働けた場合に得られたはずの逸失利益の満額に相当する、2,000万円の解決金を使用者側が支払う内容で和解することになりました。
最高裁判決を勝ち取った第1事件から上記和解まで6年以上にわたる闘いになりましたが、最高裁判決が無意味にされる別件訴訟一審判決を覆し、さらにご本人が経済的にも救済されたといえる内容でこの事件が解決できて、非常に意味のある闘いだったと思っています。
裁判や調停とオンライン
弁護士 大脇 美保
先日、民事調停で調停期日があって、久しぶりに(簡易)裁判所へいきました。
この数年で、裁判や調停のオンライン化がすすみ、それまで裁判所にいっていた期日が、
・民事裁判は「Teams(チームズ)」
・家事調停は「Webex(ウェベックス)」
というアプリで行われ、依頼者のみなさんには、事務所にきていただいて、一緒にPCの画面をみて対応するというのが多くなりました。しかし、これらのアプリは、当事者の一方が代理人をつけずに本人さんで対応している場合には使用していないようです。また、Webexの場合は、回線数に限界があるようで、事前に希望しておかないと「電話にしてください」と言われることもよくあります。
コロナの時期、電話を利用していた時期があるのですが、やはり、画面で顔が見えるのと、音声だけでは、画面ありの方が裁判官や調停委員の表情もわかるので、やりやすいように思います。また、DVの被害者の方が依頼者の場合は、家庭裁判所にいって「相手方に会うのではないか」と心配することもありません。遠方の裁判所でも、交通費もかからない点も利点です。
今後は、民事裁判の尋問なども、オンラインが活用されるのかもしれません。